第68話 画像の終活

文字数 607文字

 水彩画次回作品展のために、PC内に撮りためて日の目を見なかった画像の整理を、数日間かけてやった。コロナ禍のため、カメラをぶら下げて出歩くことが極端に減ったからだ。二つの外付けハードディスクには、十年以上の前のものも含めておそらく万単位に残っていた。その瞬間には、心を込めて撮った画像もあるはずだ。なんだか画像の終活をやっているような気分になってしまった。
 何とか約60枚程度の写真を選択、この中から3枚程度を選んで描くつもり。それにしても、時代は大きく変わったものだと思った。昔はフィルム時代で、撮ったものはすべてDP屋で焼き付けをしていた。だから、一枚一枚無駄にしないように撮っていた。でないと、DP屋を儲けさすことになるからだ。でも今は全く違う。フィルムはほとんど無くなり、撮った画像はみんなPCかスマホの中に保存されることになる。写真として印刷されることは、ほとんどなくなってしまった。画像だけのやり取りをスマホでやる時代だ。動画も簡単にやり取りできてしまう。カメラにしたって、一枚一枚撮るなんてことはなくなり、ほぼカメラが全自動で連続撮影をしてくれる。
 そんな時代に、一枚の絵を描くために数か月をかけて仕上げる。何だか変な気分になってしまう。もうこれは自己満足のために描いているというしかなさそうだ。藤井聡太は、たった一手のために数時間かける。
 デジタルとアナログのはざまをさまようのが人間かもしれない。



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