第106話 恐ろしき動物

文字数 548文字

 人間とは恐ろしき動物なのだと思う。頭の中に浮かぶ様々な空想、夢想、妄想などなど、そのほとんどのものを現実化してきた。
 原子爆弾や未来予想図に描かれた近代都市なども、もとは頭に浮かんだ思いつきがそのスタートだろう。噂されるクローン人間だって、その実現の可能性が間近に迫ってきていると言われている。でなければクローン技術規制法なんていう法律を作る必要はないのだから。
 人は頭の中で思ったこと、考えたことを様々なかたちにしてきた。文字を使って詩や小説、随筆、評論などの文学作品を生み出し、頭に浮かんだメロディを譜面化し多様な音楽作品を作ってきた。科学者は脳内に浮かんだヒントを論文化し、実験し、新しいものを発見したり、創造を重ねてきた。企業家は、一つのお思いつきを具体的に商品化し、利益を生み出し、社会に寄与してきた。現実化された作品群の数々は、おおむね人類の発展や社会貢献のためのものが多かったのだろうと思う。
 しかし、残念ながらその現実化を間違うこともある。一個人の一瞬の殺意による殺人、国を統治する人たちによる民族の繁栄や防衛、主義や思想による大量殺りくの歴史も現実のことなのだ。すべてこれらの事柄は、頭の中に浮かんだ一つの思いから発生したことだ。
 それらの全ては、脳が行っていることなのだが。




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