第493話 忍び込む老化

文字数 518文字

 老化は派手さはないけれど、着実に自分の身に忍び込んできている。何よりも物忘れが、一番に気づく現象だろうと思う。昨晩は何を食べたのか、どんなテレビを見ていたのか、普段の日常にあることがすっと思い出せない。何かの手がかりを見つけ、そこからじわりじわりと紐解くしかない。特に、今は読書が大きな楽しみになっているが、昨日に読み終えたところからすっと前に行けないのは腹が立つ。登場人物の名前や場所、背景を確認するために二、三ページ戻らなくてはならないことが増えてきた。一日空けてしまうと、本当に難儀することになる。


   心斎橋大丸もヴォーリズの作品

 つい先日も、いつもの水彩日を完全に忘れてしまい、仲間から電話があってやっと気づくといったことがあった。その日の朝に言われた家内の用事で頭が一杯になってしまい、水彩は忘却の彼方になってしまったのだ。グランドゴルフに参加の、認知症を発症しているご主人を持つ夫婦が二組いる。奥さんが言っていた。「ほんの数分まえのことを完全に忘れてしまうんですよ!」甲斐甲斐しく、ご主人に水分補給のためのペットボトルを指し出す光景をよく見る。そうはなりたくないとは思っているが、それだけは意思とは無関係の世界のことだ。



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