第110話 三つの恥

文字数 705文字

 毎日書いている<ほぼ日手帳>のコラムに、糸井重里が若気の至りでかいた恥のことを書いていた。振り返ると、そのことがあってよかったという。恥ずかしき人生、自分は今でも恥ずかしい。そんな思い出を三つばかし書いてみよう。

 一つ目、商売をやっているとき資金繰りに困り、たまたま来た友人に依頼してみたところ、意外にも快諾してくれた。約束の前日に連絡があり、当日は身内の葬儀があり、自分は受付にいるのでそこまで取りに来てほしいというものだった。葬儀の場所まで出かけてゆき、厚い封筒を無言で手渡された。逃げるようにその場から立ち去ったことは言うまでもない。
 二つ目は、会社を整理したあと再就職したところは教材の販売会社だった。電話でアポを取って出向くのだ。場所は大阪の端のほうにある能勢の医者宅だった。医者である父と母の前で、当事者の息子に、約70万円の教材を販売した。数年後、職を転々とし、能勢のごみ収集業者に就職。そこでは集金業務もあり、なんとその医者に集金に行かなくてはならぬ。先生は僕の顔を運よく忘れてくれていた。(と、思う。)
 三つ目は、幼児の頃のおもらしの話。千日前の幼稚園に通っていた僕は、当時大の方は園のトイレで出来なかったのだろう。教室で、我慢できず椅子に座ったままやってしまった。まわりは変なにおいがすると大騒ぎ。そのあとの記憶が何故か途絶えてしまっている。そのままの状態で、足に大いなる不快感を持ったまま帰宅したのだろうことは間違いない。
 いまだにこれらのことを覚えているというのは、脳に深く刻まれた証でもある。最近は、恥を何たるかの認識も薄れてきたようだ。年は取りたくないものだ。

 <川西のいちじく>

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