フクシマ 6年後 消されゆく被害 歪められた チェルノブイリ・データ

文字数 828文字

(2017/5/22)
2017年3月1日 初版第1刷発行
著者:日野行介 / 尾松亮
人文書院



ちょうど一年前発行された「原発棄民 フクシマ5年後の真実 (毎日新聞出版)」 に続く毎日新聞社特別報道部、日野記者のレポート。
「フクシマ X年後シリーズ」になるのだろうか?
本作では、自らをロシア語使いと称するロシアスペシャリスト尾松さんとの共著になっている。
尾松さんの役割は単にロシア研究者としてロシアの資料精査するにとどまらず
日本の民主主義を守るための鋭い視点を表明してくれる。
福島原発事故後、多発が露見した甲状腺がんだが、我が国の為政者たちは幕引きを図るため唯一の参照先(チェルノブイリ・データ)を歪曲した。そして福島原発事故と健康被害の因果関係を否定するためのデータとして悪用し強引な幕引きを図ろうとしている。
本書では:
●甲状腺検査に仕組まれた罠
●歪められたチェルノブイリ甲状腺がん
●日本版チェルノブイリ法はいかに潰されたか
●闇に葬られた被害報告チェルノブイリから日本はどう見えるのか
以上の章を著者が交互にまた同時に意見を連ねていく。
このような国の責任回避は担当大臣の度重なる暴言の端々に現れている通りであり、
正確に言えば大臣たちは暴言ではなく本音を言っただけのことであることが本書を照らし合わせるとよく理解できる。
ロシア、ウクライナ、ベラルーシ(旧ソ連)を主な対象としたチェルノブイリ法では国が事故後の健康管理と発病治療の責任を負うことを明確にし、実に30年後の今に至ってそれが有効になっている。
社会主義国ならではの手当といってしまえばそれまでかもしれないが、
国家が全く原発事故の責任を取らない日本とのギャップに唖然とする。
ことは国民の命にかかわることであり、僕らがそのような大切な情報(チェルノブイリデータ)にアクセスする道が閉ざされているところが問題だ。

国民の意思決定の方法をあからさまに閉ざすところに民主主義はない。
いまだもって「アンダーコントロール」など遠い先の夢物語である。
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