マルティン・ベック シリーズ【サボイホテルの殺人】 (2013/10/2)

文字数 1,670文字

1970年発表、1975年角川書店 単行本第6版
著者:マイ・シュベール&ペール・ヴァール
訳:高見浩



シリーズ6作目。
商売上手の角川書店は6作目から単行本に変更した、
このころ(1975年)当シリーズはベストセラーになっていたからだろう。
6作目のテーマは、「富の不公平配分」・・・今もなお問題になっているテーマでもある。
大富豪の企業会長がホテルの晩さん会席上で射殺される、
しかし犯人はまんまと逃亡してしまう。

この企業には国際的な問題があった…政治問題になってくる殺人事件、
ベックたちに重圧がかかってくる。
ストックホルムが都市化され無機質な街並みになっていくことを嘆くマルチン・ベック。
このスウェーデンの社会変質を厳しく見つめる視線がシリーズの一方の魅力であり
僕にとっての楽しみ方でもあった。
無論ミステリー、警察の捜査描写は相変わらず真面目にとらえられている。
シリーズで登場するメンバーの成長、人物像が毎回上書きされていくところも、
再読して改めてその周到さに気づいた。
30年以上前にも思ったが、このシリーズ「10作限定でスウェーデンの10年史を描く構想」
が気になってくる6作目だった。

ここで、シリーズの登場人物をレビュウしてみよう:

マルチン・ベック (40~50歳)
無論主人公、ストックホルム警視庁殺人課主任警視。
類いまれなる直感を持ちながら地道な捜査活動をいとわず事件を解決していく。
寡黙で不愛想であるため人には好かれないが捜査に関してはだれもが信頼を置く。
妻と息子とは性格が合わず、娘の意見に従って離婚、帆船模型作りが趣味。

レンナルト・コルベリ(38~48歳)
殺人課警部、ベックの理解者であり親友。
ベックもコルべりには全幅の信頼を置く、言葉がいらない二人の連係プレイも読みどころの一つ。
元空挺隊員で力仕事もできるが故あって拳銃は持たない主義。
15歳年下の妻を熱愛している。

グンヴァルト・ラーソン (35~45歳)
殺人課警部、海軍、船員を経て中途採用されたたたき上げではない警官。
自分流の捜査活動を押し通し、上層部を非難し昇進の見込みはない。
優雅な独身貴族として公私をきっぱりと分ける生活スタイル。
本物の貴族出身だがその出自を嫌い一族を憎んでいる。
衣類、アクセサリー、家具などセンスが光る、銃も官給のワルサーではなく
自分でS&W38を調達している。
酒、たばこを避け健康な生活を目指す巨漢金髪のうるさ型警官。

フレドリック・メランデル
殺人課警部、人間コンピュータと称せられる。
ほとんどの事件詳細、人物像を記憶していて、瞬時に引き出すことができる。
ベックにとっては合理的支えになる人材。
一日に10時間睡眠をとる、ランチはホットドッグの節約家、
不器量な妻を美人だと思い込んでいる。

エイナール・ルン
殺人課刑事、ラップランド少数民族出身、こつこつと捜査するのが取り柄。
ベックには今一つ頼りにされていないが本人もそれを承知しているので
余計に気まずい雰囲気になることが多い。
不思議なことにみんなの嫌われ者のグンヴァルト・ラーソンの唯一の友達。

オーケ・ステンストルム
殺人課若手刑事、尾行の名人だったが、「笑う警官」の冒頭で2階建てバスの中で射殺される。

ベニー・スカッケ
オーケ・ステンストルムの後任の若手刑事、将来は警視総監を目指す野心家、
その準備に励んでいる。
法律の夜間学校に学び、毎日体を鍛えている。
「消えた消防車」では大きなへまをしてコルべりが生死をさまようことになり、責任を取ってマルメ警察に自ら異動する。
そのマルメで起きた「サボいホテル殺人事件」では再びベックたちと一緒に操作することになる。

オーサ・トーレル
オーケ・ステンストルムの恋人だったが、彼の殉職後、婦人警官になる。
小柄なかなりの美人。

ペール・モーンソーン
マルメ市警察警部、大事件の折にはベックの応援にストックホルムに出張る。
ベックと気が合う稀な警官、「笑う警官」「消えた消防車」「サボいホテルの殺人」
では重要な役割を担っている。
デンマーク警察に強力なコネ(モーゲンソン警部)を持っている。
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