オンブレ  (2018/7/15)

文字数 768文字

2018年2月1日 発行
著者:エルモア・レナード  訳:村上春樹
新潮文庫



ここのところ新作が発表されない村上春樹作品だが、彼のライフワークでもあるアメリカ小説翻訳は順調のようだ。エルモア・レナードといっても日本ではなじみが薄い作家だが、彼の初期の西部小説を村上さんが今回初めて翻訳紹介した。
実はエルモア・レナードは西部小説が衰退した後、西部の荒くれ者対正義のガンマンの構図を現代によみがえらせた。
「ラ・ブラバ(1983年)」を代表とする
コンテンポラリー・ノワール・ミステリー(コンノア:村上氏造語)を多作している。

本作は1961年に発表された西部劇小説傑作、村上翻訳で今蘇ったという次第だ。
駅馬車が廃業になるころ、最後の駅馬車に乗り合わせた6人に降りかかるトラブルと死闘が描かれる。
主人公はアパッチに育てられた青年ジョン・ラッセル 通称オンブレ(男)、同乗したインディアン管理官夫婦、インディアンに拉致され救出されたばかりの少女、夫婦の財産を狙うならず者、そして物語ナビゲーターの駅馬車会社社員。
僕はジョン・フォードの「駅馬車」、「捜索者」を思い出さずにはいられなかった。

ならず者の仲間が駅馬車を襲う、水・食料なしで砂漠に放置される乗客。
一人果敢に戦うオンブレの心のなかは?
何のために闘わなければいけないのか?銃を使うということの意味は?
西部開拓の混沌の中に見えてくる正義を貫く強さとモラルが問われてくる。
西部劇は、やっぱりアメリカ人の心の土台になっているのだと確信する、
良し悪しを併せ持つとしても。

エルモア・レナード原作・脚本のシネマがたくさんある:
●太陽のなかの対決(本作) 1967年
●シノーラ 1972年
●ジャッキー・ブラウン 1997年
●アウト・オブ・サイト 1998年
●ビ・クール 2005年
●3時10分、決断の時 2007年
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