昭和16年夏の敗戦(新版) (2020/9/12)

文字数 920文字

2020年6月25日 初版発行 7月20日 再販発行
著者 猪瀬直樹
中央公論新社



1983年単行本、1986年と2010年に文庫化されている、不勉強ながらようやく手にしてみた。
全くの偶然だろうとは思うが、昨日 日本海軍が壊滅した「ミッドウェイ海戦」を映画で見た、
その冒頭で山本大将が日本を追い込まないようにとアメリカ外交武官に示唆する場面がある、
その昭和16年開戦前に日本は崖っぷちに追い込まれ最後の賭けに出ていた、「戦争」という。

その16年、急遽呼び寄せられた30数名のエリートたち、軍人、官僚、基幹産業に在籍する
30歳前後そうそうたるメンバーに下された命令は「総力戦研究所」への1年間の出向だった。
総力戦研究所は内閣直属、当時の首相は近衛文麿だったが、11月には近衛が投げだした
内閣を東条陸軍大将が引き受けることになり、東條首相の元での研究所員による模擬内閣
の様子が再現されるのが、本ノンフィクションの読みどころのひとつになている。
総力戦研究所による目前に控えた米英との戦争は2~3年で敗戦するとの結論になるが、
東條首相は全く歯牙にもかけない、日露戦争も勝てると思った戦争ではなかった・・・と。
そもそも太平洋戦争開戦の最大のキーは「石油」、インドネシアの石油を盗りに行くしかない
日本を追い込んだABCD包囲網、そして彼らとの妥協は日本にはなかった。

本書は英米との総力戦を叡智のみで考察した研究生のむなしい昭和16年の夏を描く一方で、忠臣東条英機が背負わされた国務と統帥権の矛盾、統帥部との連絡会議を経て最終決定される御前会議の根本的欠陥システムをも俎上に挙げ、そこから今も変わらない日本的決定にかかわる暗闇を論じている。

巻末付録として掲載されている著者と石破茂氏との対談も、今進行中の首相選挙のドタバタを念頭に読んでみると興味深い、2010年の対談であるから、日本は10年間は何も変わらなかったということか?
いや、昭和16年からだとすると・・・・・80年近くも。
いやいや、今新型コロナ感染対策に対応する専門家会議、担当所轄大臣、官邸官僚のどこから見ても不合理な決定過程は?
先に結論ありき?
今の日本の政治はまさかの昭和16年代ものだったとは!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み