〈新装版〉 お腹召しませ (2020/10/7)

文字数 654文字

2008年9月25日 初版発行 2020年8月25日改版発行
著者 浅田次郎
岩波書店



12年ぶりの文庫改定になった短編集、今まで手に入らなかっただけに早々に拝読した。
以下6編が収められている:
●お腹召しませ
●大手三之御門御与力様失踪事件顛末
●安藝守様御難事
●女敵討
●江戸残念考
●御鷹狩
浅田時代小説、「ホロリ」とさせられる味わい深い作品たち、司馬遼太郎賞をいただいている。
6編ともに徳川時代末期、明治維新前後に生きた侍の悲哀に溢れたエピソードばかり。
特異な構成なのは、著者自身が物語の紹介をし、その感慨を述べているところ、単純な時代小説集ではない。

そこには、まるで融通の利かない窮屈な侍が憧れる「自由」や「建前ではない本音」が
心優しく語られていて、僕はいつもの様に文庫を胸にニタリ、ホロリ・・・となる。
巻末の著者解説にあるように、昭和26年生まれの浅田さん自身を、武士の時代からたった83年しかたっていないとして彼ら侍の心情を身近な物としている。
かくいう僕も昭和25年生まれ、常々日本社会の美点も欠点も武家様式の遺産であると思っている、だから浅田時代小説がよくよく身に染みてくるのだろう。

最近の流行りになってしまった「忖度」などは、まったくもって侍の思考回路に他ならない、
ただし責任を取ろうとしない現代の被忖度者は侍とは言えないだろう。
それとも、本書にあるように、侍全員が責任を全うしたわけでもないとすれば、日本人は奥が深いのか?
これだから、浅田時代小説は一筋縄ではいかない、
ただニタリ・ホロリだけでは終わらない。
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