ある男 (2019/5/2)

文字数 528文字

2018年9月30日 第一刷発行 11月5日 第4刷発行 
著者:平野啓一郎
文藝春秋



本の帯宣伝コピーに曰く:
『 愛にとって過去とは何か? 幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどり着けるのか? 
 「ある男」を探るうちに、過去を変えて生きる男たちが浮かび上がる。人間存在の根源と、
 この世界の真実に触れる文学作品。』

物語は幸せな人生を実感しながらも、とらえることのできない強迫概念に苛まれる弁護士が引き受けたある調査をベースに進む。
弁護士は在日三世だが高校生の時帰化しその出自にこだわりはないものの、近年のヘイト潮流にいわれなき怒りすら感じる。
彼が依頼を受けた調査、身元が全く不明の亡くなった夫の身元を探る中で浮上してくるさまざまな日本の現状。
嫌韓、嫌中トレンド、戸籍ロンダリング、地震に象徴される災害への諦念、死刑問題の本質、夫婦の亀裂、家族崩壊、愛情と尊敬の危うさ。

一人の男のアイデンティティに深く立ち入ることで、調査する弁護士も、依頼者も、調査に関係する人たちがその真情を漏らし途方に暮れる。
ミステリー仕立ての謎解きの興味もあるが、それ以上に人間の心の奥の暗さや可愛らしさに気づかされる大人の恋愛物語でもあった。

初めて手にした 平野啓一郎作品、本作は名作。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み