64 ロクヨン (2014/1/17)

文字数 822文字

2012年10月第1版、2013年1月第4版(の中古書)
文芸春秋
著者:横山秀夫




まずは軽く言い訳から、
「横山仕事人ストーリー」のファンなのに、今頃本作を読んだ(それも中古本で)のは、
発刊時ちょうど「還暦文庫構想」にかかずらっていたためだった。
長年しまい込んできたお気に入りの本をもう一度読み返すぞ!
当分新刊には手を出さないぞ!…と決意した頃だった。
その後、固い決意も綻び始めて今ではお気に入り作家は、
好きなジャンルは新刊も読みたい・・・・に変化してきた。

人は過去に帰ってばかりでは楽しくない。
寿命100歳社会に生きようかという僕には、やはり時代の息吹がほしかった。
ふと気が付くと、横山さんの本作が絶賛されていた。
しまった・・・と思ったがこんな時にはおかしな意地を張ったりするものだ
・・・そんなに急ぐこともなしと言い聞かせていた。
結局1年以上経過してやっと本作にたどり着いたというわけである。

本作は、横山作品の最高峰だ。
彼の作品を象徴する言葉として、僕は常に「矜持」を捧げてきたが、
本作はそれに加えられたあまたのエッセンスが調合され蒸留されていた。
テーマである警官の矜持は今回は「広報官」の職をまとっていた。 
刑事と警務、自治体警察と警察庁、キャリアとたたき上げ、
この断絶の中で「矜持」を取り戻す主人公。
広報官とマスコミとの闘いもストーリーの大きな要素になっている。

「クライマーズ・ハイ」の時にも感じたが横山さんは新聞記者であったのに彼らに容赦ない、
いやブンヤだったからなおさらなのだろうか。
横山さんは本当は警官になりたかったのか・・・と思われるような
今作での主人公の葛藤とカタルシスに圧倒され感動した。

ある県警本部広報官の矜持だけではなく、しっかりとミステリー部分も構築されている。
ラストシークエンスでの報道協定、誘拐捜査で、僕は久しぶりに息をつめて頁をめくっていた。
二重三重の謎解きも、あざとくなく清々しい。
繰り返す、横山ワールド最高峰だった。
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