カレードスコープの箱庭 (2014/4/3)

文字数 685文字

2014年3月19日 第1版
宝島社
著者:海堂尊



「チーム・バチスタの栄光」で医療小説に新しい息吹を吹き込み、
あろうことか一気にシリーズを完成させた海堂尊。
心療内科医「田口」と厚労省ロジカルモンスター「白鳥」コンビの
ファイナルエピソードである。

実は、前作【ケルベロスの肖像】で唐突ながらシリーズは終了したとのことだったが、
本作は潔さをかなぐり捨てた、作者の心情的な完成作品になっている。
あらすじは大きく二つある。
①検体取り違えか?それとも誤診か?病理検査をめぐる謎に挑むコンビ
②「Ai標準化国際会議」開催の準備とその成果
海堂氏が一貫して小説の中で主張してきた「Ai(Autopsy Imaging 死亡時画像診断)」
の普及活動が(フィクションとはいえ)一つの達成点となるのが本書であり、
その意味からも完結編たる所以であろう。

なによりファンがうれしかったのは、シリーズのヒーローたちがこの会議に参集するところだ。
●「チーム・バチスタの栄光」の天才心臓外科医、桐生
●「ジェネラル・ルージュの凱旋」のレジェンド、速水ERドクター
●「イノセント・ゲリラの祝祭」の天才病理学者、彦根
特に桐生医師はメスを捨てた後の消息が全く不明だっただけに、
久しぶりのクールな存在にしびれてしまった。

今、ちょうどシネマでも「ケルベロスの肖像」が上映されている、最後の事件だとして。
このタイミングでVery Last Story を出版するのも面白いものである。
ちなみに。中村・伊藤コンビのシネマは僕は観ない、
竹内・阿部組がシネマとしては優れている。
少なくともTVドラマのムーヴィ転化は安直すぎるだろう。
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