ハーバードの人生が変わる東洋哲学 (2019/1/23)

文字数 824文字

2018年6月25日 発行
著者:ミケル・ピュエット & クリスティーン・グロス=ロー
ハヤカワ ノンフィクション文庫



オリジナルタイトルは「中国の哲学者たちは良き生について何を教えてくれるのか」だけど、【ハーバード】に滅法弱い日本人向けの改訂邦題になっている。
敢えて付け加えれば、【中国】ではなく【東洋】にしている点も商業的意図が見え隠れする、日本人の偏向傾向を裏付けるものではある。

本書は「ハーバード白熱講教室」として人気の講義をベースにした中国哲学をアメリカの政治・経済活動の規範として捉え直したものだ。日本版には「悩めるエリートを熱狂させた超人気講座」という、ご丁寧なサブタイトルまで追加されているが、内容は実際刺激的で僕の人生ラストステージに役立つものだった。
原題どおり、孔子、孟子、老子、荘子、荀子の思想概要をハーバード風に読み解いていくのが本書のすべて。
ダイジェストそれも大幅なダイジェストではあるが中国古代の思想家たちに共通する考え方を、西洋思想と比較考証し、読者の人生に役立てようとする意図は心地よかった。
まず著者は、アメリカ(西洋)人が陥っている思想的行き詰まり・・・自分探し・自己追及・自己実現を人生の重要要素とする考え方が、カルビン派に根差すものと指摘する。この考え方そのものが人生の足かせになっているかも‥‥と続ける。

世界は日々刻々と変化していき、同じように人の心も変わっていく。
硬直した思想や倫理をもってこれらの変化に対応していくとどこかで行き詰まりや矛盾に出くわす。
そんな時、毎日の生活の中にこそ人々の真実と問題解決方法があると説く中国思想家たち。

いま世界のなかで原理主義と教条主義の揺り戻しが大きな問題を引き起こしている。
そのベースとなる個人主義・利己主義への反省としても本書から読み解かれる中国思想は尊いものがあった。

もはや、原書に手を付ける力も時間もない身として、本書は得難い教師になった、
それもハーバードのセンセイ!
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