スマイリーと仲間たち

文字数 772文字

1987年4月15日 発行 2012年3月25日 7刷
著者:ジョン・ル・カレ 訳:村上博基
ハヤカワ文庫



ジョージ・スマイリー スパイ三部作最終編、圧巻の幕切れに心が震える。
第1(ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ)では英国情報部(サーカス)に潜む二重スパイを駆除し、
第2(スクールボーイ閣下)では、英国情報部チーフに返り咲き、ソ連情報部長カーラへの反撃を開始したスマイリー、
本作では、情報部を引退したスマイリーに持ち込まれた古い情報活動の仲間からの要請に孤軍奮闘する姿、そしてとうとう宿敵カーラとの決着の時を迎える。

ベルリンの壁(1961年~1989年)の検問を越えてやってくるカーラを
2時間前から待つスマイリー。
『・・・来る、いや、来ない。来るかもしれない。これが祈りでなければ何が祈りだろ・・・』
凍えるような寒さの中でカーラ-を待ち受けるスマイリー、
『・・・来るな。とスマイリーは胸の内でいった、撃て、とスマイリーは胸の内で、自分の仲間 ではなく、カーラ側の連中に叫んだ。そのちっぽけな生き物が、今しも背後の黒い城と自分のつながりを絶つのだとあらかじめ知っていることが、不意に恐ろしくなってきた。その男を監視塔から撃て、トーチカから撃て、白い営舎から撃て、倉庫の見張り台から撃て、ゲートを閉じてしまえ、倒せお前たちの裏切り者だ、早く殺せ!狂おしい脳裏にその光景がくりひろげられ・・』

スマイリーとカーラは姉妹都市、一つのリンゴの半分同士だった。
諜報機関に深い愛情を注ぎ崇高な使命であると信じた二人のスパイがお互いを認め戦い終わった瞬間だった。
「寒い国から帰ってきたスパイ」のスリリングな情景をあえて再びよみがえらせたには、
スパイの時代がそして大英帝国の威光が終焉に向かってきたから、
本作におけるスマイリーの超人的活躍は、
ジェームス・ボンド的スパイ像を否定してきたル・カレの消えゆく伝説への餞別だった。
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