死のドレスを花嫁に (2015/12/11)

文字数 570文字

2015年月10日 第1刷
著者:ピエール・ルメートル
訳:吉田恒夫
文春文庫



「その女 アレックス」の原点という触れ込みに早速反応しました。
本作は、ただし、カミユ・ヴェルヴェーン警部シリーズではないノン・シリーズ作で、
ネタバレぎりぎりで 「その女 ソフィー」とでも言っておきましょう。

主人公ソフィーの壮絶な不幸な物語が執拗に繰り返される前半は、読んでいる僕までが精神的ストレスを感じます。
幸せな結婚生活が一転して、悪夢の世界になり、周りに血と死が転がるようになったら、あなたならどうしますか?
著者本人が解説しているように、その恐怖とサスペンスは心理描写ではなく、
さりげない情景の挿入によっていやがうえに迫力が増します。
それはあの ヒッチコックメソッドに通じるものなのだそうです。
とんでもない作家がフランスにあらわれたものです。
今作でも、「そんなのありかよ?!」というくらいのダークサイドが登場し、
通常のサスペンスでは予想できない展開に驚かされます。
「アレックス」同様、謎解き後のカタルシスには決して快感に浸れるわけでもなく、
倫理的冒険に悩むかもしれません。

しかし読書、それもミステリー・サスペンスは非日常であれ…と 僕は信じています。
その意味では、もう一度「アレックス」を追体験できるかもしれませんが、
一度でたくさんと思った方にはお奨めしません。
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