銃 (2018/11/22)

文字数 493文字

2012年7月20日 初版発行 2016年6月30日 15刷発行
著者:中村文則
河出文庫



魔剣、妖剣の伝えは歴史上数多くあり、フィクションの世界でも興味深いテーマになる場合がある。村正 然り、アーサー王のエクスカリバーもその類だ。
剣(刀)は人を殺めるためにつくられた武器である限り、そのような負の伝説が生まれてくる。
一方で、「気違いに刃物」(現在では不適切表現言葉らしいが)という、妖剣ゆえに人間がそれに取りつかれる悲劇もある。

本作は、魔剣を拳銃に置き換えた物語、一人の青年が拳銃の魔力に引き込まれ崩壊する経過を一人称で執拗に描いている。
拳銃はCOLT LAWMAN MK Ⅲ 357 MAGNUM. 日本でも刑事ドラマでおなじみの拳銃。

この拳銃を偶然拾ってしまった大学生の狂気のカタストロフィーに終始するため、読後感はよくない。中村作品のテーマによく出てくる「殺人」への願望とその罪の重さが本作品でも色濃く表れている。
ふと手にした拳銃に魅せられて、破滅に突き進む主人公、
その姿に違和感を感じながらも、もしかして自分もそうなってしまうかもしれないと想像する恐怖。
相変わらずの中村文学だった。
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