傷だらけのカミーユ (2016/10/13)

文字数 551文字

2016年10月10日 第1刷
著者:ピエール・ルメートル  訳:橘明美
文春文庫



カミーユ警部シリーズ、「その女アレックス」、「悲しみのイレーヌ」に続く三部作、完結編。
シリーズの2作ともに僕はかって経験したことのないミステリー構成に翻弄され、それに陶酔した。
大きく分類すれば叙述的トリック範疇に入るのかもしれないが、
その企みを事前に警戒して読み進めて行っても最後にはその罠にはまってしまう。

今作では妻を殺された身長145cmのカミーユ警部にも、精神の安定とともにようやく恋人ができている。
なんとその恋人が、強盗グループに遭遇し重傷を負い、その後も命を狙われるという事件からスタートする。
無論、事件の表層どおりに物語は進行しない。
恋人を救うため,文字通り自分のキャリアと存在を賭して単独捜査に突き進むカミーユ。
その姿は、愛する女性への「犠牲」の精神に尽きる・・・原題が「犠牲」となっているのは大いに腑に落ちる。

カミーユーシリーズの特徴である物語そのものにトリックが仕込まれているため、なにを語ってもネタバレに抵触するが今作もミステリーの洗練度は保証する。
三部作の中では、一番大人しい意外性だけど、その代わりにカミーユの傷ついた心がじわじわと迫ってくる。
邦題「傷だらけのカミーユ」がその感覚を秀逸に表していた。
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