フクシマ 5年後の真実 原発棄民 (2016/3/26)

文字数 1,061文字

2016年2月25日 発行
日野行介
毎日新聞出版



毎日新聞、特別報道グループにて福島原発事故を追い続ける日野記者による取材ノンフィクションを3.11発生5年目にまとめた本書。
本書のターゲットは「原発避難を終わらせるための政策」の非人道性を暴くこと。
政府は昨年2015年、2017年3月末をもって年間20ミリシーベルトを下回らない地域を除いて避難指示を解除し、また1年後までに月10万円の精神的損害賠償も打ち切る…とした。
おそらく、フクシマの人びと以外には関心をひかないニュースなのだろう。
ここに潜んでいるのは「子どもたちの健康障害」、「住む家」の問題、それも重要な恐怖に満ちた問題。
政府は自立と復興加速を掲げて原発による被害者を押しつぶそうとしている。
原発事故前は年間1ミリシーベルト以下の安全基準が20ミリシーベルトに拡大されて、
安心する母親はまずいないだろう。
避難指示地域以外の自主避難者への住宅提供も同時に打ち切られる。
分かりやすく理解するために、北海道に自主避難した母親の手紙がある、以下引用:

・・毎日新聞の記事を読みました「避難者漂流」
原発事故で被ばくを恐れ、避難指示がないまま避難を決意した私たちは
その時点で漂流者でした。支援、保証、倍賞、なにも先が見えないまま、
それでも我が子たちの将来を考えたとき、少しでも要らぬ被ばくを避けたい、
その一心でマイホームも、仕事も、友人、知人も、家族との時間も手放し、決心した避難。
長引く二重生活に家計は苦しくなるばかり。先が見えない不安からきちんとした仕事に
就くことできず、1年ごとにまるで死刑執行が延期されるかのように延長が決まる
住宅支援を頼みに4年間どうにかやってきました。
原発事故は一瞬で人の人生、生活を根本からひっくり返します。
もう二度と元には戻らない状態にします。
原発事故は人災なのに、誰一人裁かれない、責任も取らない。
まるで放射能を嫌って怖がって逃げる人々の方が悪いかのように言われてしまう。
こんな状態で、どうやって起きたことを受け入れて前へ向かって進むことが
できるのでしょうか。先進国と言われている国の中で「漂流」なんてあってはいけない。
自主避難者切り捨てが現実に起きたらそれは子供たちの生活や未来を斬り捨ててよいと国が判断したも同じことです。・・・・

フクシマの原発棄民は、まったく他人ごとではない。
新たな原発核事故で日本人すべてが棄民になる可能性がある。
それでも経済性が優先するというのならそのような政府はいらない
(もっとも僕は彼らを選んだことは一度もないが)。
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