熊と踊れ (2017/4/28)

文字数 779文字

2016年9月15日 発行
アンデシュ・ルースルンド、ステファ・トゥンベリ  訳:ヘレンハルメ美穂、羽根由
早川文庫



2017年年間ミステリー評価で首位を総なめしたクライムサスペンス小説。
なんともこれまたスウェーデンの小説、歴史あるスウェーデンサスペンスの魅力を味わうことができて満足した。
ところがどっこい、本作は実録小説であることを読後、解説で知ることになり改めてこの国の小説底力を認識しなおすことになった。

物語は父親の暴力に大きくそして歪んで影響された三人兄弟が、その暴力の威力をもって銀行強盗を繰り返すという、まさに「事実は小説よりも奇なり」の展開に、実話ならではの父息子、兄弟の感情の揺れ動きが生々しい。
といっても、決してドキュメンタリーに偏った結果エンターテイメントに不備を感じることもない。
著者のステファン・トゥンリはこの兄弟の一人(ただし犯行には加わらなかった)であることが事実の重さを裏付けし、「グレーンス警部シリーズ」の作家として著名なアンデシュ・ルースルンドが事実のファクターを収集し、再度パズルのように組み合わせた。
スウェーデン古典的ポリスストーリー「マルチン・ベックシリーズ」も共著だったように
この国では二人で討論を重ねる小説作法があるらしい。

裏社会に関わりのない20前後の若者兄弟と幼馴染が、軍の武器貯蔵庫から秘密裏に膨大な武器弾薬を盗み取り暴力の道具を持つ。
緻密な計画と確信「人は圧倒的暴力に無力になる」をもって銀行を襲う彼らは、どんどんと犯罪の深みにはまっていく。
暴力の恐怖のトラウマがある捜査担当警部との水面下の駆け引き、兄弟に君臨した父親との幼い頃の暴力の思い出がフラッシュバック、
犯罪ストーリーは終末に向かって加速する。

それにしても、このクライムサスペンスが事実に基づいていることが一番の驚きであり、一方で大きな納得でもあった。
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