銀河を渡る  全エッセイ (2018/10/24)

文字数 823文字

2018年9月25日 発行
著者:沢木耕太郎
新潮社



沢木さんの全エッセイ集としては3作目だとのことだが、僕は今回が初めてのお付き合いとなる。
「路上の視野」、「像が空を」から25年経過しての全エッセイ集、1994年から2018年までのエッセイを収めている。
膨大なエッセイ群をキーワードで五つの部門に分けている。
1.「歩く」
2.「見る」
3.「書く」
4.「暮らす」
5.「別れる」
ご自身でも認めているようにノンフィクション作家としては遅筆で長尺なのに、短文を求められるお仕事も多いのだろう。
エッセイというよりコラム欄雑文の類も全て納められている。

3歳年上の沢木さんだが、「テロルの決算」、「深夜特急」など若い才能あふれるノンフィクションライターとして眩しい存在だった。
彼の自由奔放な行動、それによく似合う文章は僕のあこがれでもあった。
今この全エッセイ集を拝読し改めて一匹狼の生きざまに感心している。

ノンフィクションのなかにフィクションを絶対に取り込まないという信念は、前述した短文のなかで悲鳴を上げていた。
伝えたいことが盛り込めない文章に僕は勝手に悔しさをかみしめた。
今回の3番目のエッセイ集に初めて登場したキーワードが「別れる」、取材した人との「死」を記している。
そこに登場するのは 美空ひばり、松田毅一先生(仏語)、長洲一二先生(ゼミ)、カモカのおっちゃん(田辺聖子夫君)、相賀徹夫(小学館社長)、太田欣三(編集長)、内藤利朗(カメラマン)、高倉健、檀ヨソ子(檀一雄夫人)。
彼らへの濃密な惜別と感謝の情に僕は引き込まれる。
ノンフィクションライターならではのご自身の真実の想いがそこに込められていた。

ところで、僕は沢木さんがフィクション(小説)を書いていたことを知らなかった。
沢木さんによれば、ノンフィクションとフィクションの間には広大な銀河が横たわっているという。
何億光年もの銀河を渡る作業がフィクションではないかともいう。
彼の小説を読んでみたくなった。
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