女のいない男たち (2014/4/22)

文字数 832文字

2014年4月14日 第1版
文芸春秋
著者;村上春樹
 


久方ぶりの短編(中編?)集。
ご本人も自認しているように得意な長編に比べると短編を書くにはかなりの
モチベーションが必要だったらしい。
しかし、この短編集はなかなかの出来具合である。
村上主義者としての贔屓を差し引いても上等に位置することは保証する。

タイトルになっているのが書下ろし作で最後のまとめのように編集されている。
2013年12月から2014年3月に掲載された短編が収められているが、
この期間を観てみるとしっかりと戦略の中で作られた短編集であるのも想像できる。
テーマは表題の「女のいない男」。
1.「ドライブ・マイ・カー」
2.「イエスタデイ」
3.「独立器官」
4.「シェエラザード」
5.「木野」
6.「女のいない男たち」
の6作品が収められているが、連作ではなく独立した世界をそれぞれが映し出している。
作品の概要を説明するほど野暮ではない。
ただそのエッセンスをちょっと辛口にまとめてみると;
1.「ドライブ・マイ・カー」は 愛の喪失とそこからの解放
2・「イエスタデイ」は 村上さん得意の学生時代の甘酸っぱい思い出(ただし対象が男)
3・「独立器官」は 恋煩いは死に至ること
4.「シェエラザード」は 女の性欲が有する恐怖
5・「木野」はこれまたお得意のアナザーワールドもの
6.「女のいない男たち」は 理想的な女のいない世界

全作品すなわち村上テイストの総決算ともいえる。
ソフト女性エロ物語、懐かしの70年学園神話、スノッブのたどり着く気ままな終局、
追い詰められた中の快楽、怪奇に頼る痛快血路。
これらは村上ワールドの今や完成された必須ファクターだ。

そして、僕らの年代にまとわりつく男女差別見直し黎明期の名残り。
「女」は「男」にとってxxxxxxと考えてしまう危うさを知りながら
「女」の思想に寄りかかりながら、結局「男」主体のマッチョになっている。

だからこそ、この村上ワールドは現代の軟弱男性の盲目的な支持を得ているのだろう、たぶん。
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