彼女がその名を知らない鳥たち (2017/8/17)

文字数 619文字

2009年10月10日初版発行 2012年1月25日 14刷発行
著者:沼田まほかる
幻冬舎文庫



「まほかる シネマ」原作第二弾、《ユリゴコロ》に負けない暗さと陰鬱に疲れ果てた。
まだユリゴコロには開き直ったストーリーテラーの矜持というか、読者への迎合気味の大団円が用意されていたが、
本作にはそんな気遣いは全くなかった。
不幸な嫌味な人たちの品評会のような登場人物:
主人公(だろう?)の十和子は優男にまるで弱い、今も全くさえない中年男と同棲しながらも新しい男との出逢いにときめく。
以前にも優男で悲惨な経験をしたのに懲りることなくである。
そんな十和子を優しく、しかしどこか異常な目線で執拗に付きまとう同居人陣治(もしかして主役?)、
この4人の主要人物すべてが一言で言って『胸糞悪い』連中だ。
「まほかる」小説のお約束なのだろうか、サイコタッチの展開の中で後半(四分の三)あたりからそのスピードが速まってくる。
度肝を抜かれるようなプロットではない、それはユリゴコロと同じで、ディープなサスペンスファンにはその展開は容易に読める。
それでもこのやりきれない汚濁感、人間の本質の下劣さに辟易しながらも魅せられていく、不思議なことだ。
結末のカタルシスすら僕は嫌悪してしまった。
ということで、十和子を蒼井優さん、陣治を阿部サダヲさん、過去のくず男を竹野内豊さん、現在のくず男を松坂桃李さんが演じる興味が途方もなく大きくなってしまった。
10月28日公開が待ち遠しい。
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