夢を見るとき脳は (2,021/10/2)

文字数 1,949文字

2021年9月10日 第1刷発行 
著者:アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド
訳:藤井留美
株式会社紀伊国屋書店



夢の起源と意味をめぐる問いかけは人類誕生と同時に生まれたという。
実験と実証に基づいた夢の科学的研究は、19世紀になって活発になったが、フロイトの「夢判断(1999年)」をもって心理学的アプローチとされるものの、
本書ではこのフロイト理論に懐疑的であり、フロイト以前の研究実績をから最新の機器を駆使した実験結果に至る、科学的夢理論を検証するという試みがなされている。
夢は人間ならではの才能らしい、どんな人間も夢を見るがその記憶を覚醒した時に覚えているか? そしていつまで記憶できるか?という難問があるため、「まったく夢を見ない」という人間も存在する。
では人間であれば、皆見るという夢についての素朴な問いかけがある:
①脳はどうやって夢をうみだすのか?
②夢にはどんな役割があるのか?
③その役割を果たすために、なぜ夢を見なければならないのか?
本書の答えは・・・①から③まで、すべて「わからない」となっている。
代わりに本書では、有望な答えにたどり着けそうな仮説を様々紹介し、最終的には解答モデルである「NEXTUP」を提案してくれる。
このように、大量の科学的研究資料と仮説から著者たちの研究成果を読み解いていく作業は、素人の僕には容易なことではないだろうと危惧していたが、それほど困難を覚えるものではなかった。
というのも、僕には「夢」の正体を知りたいという強い想いがあったからだ。
すこしブックレビューから離れることになるが、僕の夢トラブルをご紹介しておこう。

26年間どっぷりとつかっていたトライアスロン人生から、脊柱管狭窄のため退くざるを得なくなったのは63歳の時だった。
突然 数歩歩くことすらできなくなり日常生活にも支障をきたすようになった、トライアスロン・トレーニングは当然諦めた。
なんとか復活をしようと治療・リハビリに励んが結局そのまま心を失ってしまった、トライアスリートの心を。
65歳で働き止めして「サンデー毎日」となった、文字通り24時間がフリーになった。
ランニングだけはレベルの低いところで実行できるまでに回復したが、ストレスのたまるランニングでしかなかった。
その頃から、同じ夢を繰り返し見るようになった。
トライアスロンのレースの夢、どうしてもスタートできない夢ばかり、様々なDNS(Do Not Start)を夢の中で経験した。
スタートに遅刻する、バイクを預け忘れる、ウェットスーツが見当たらない、(ひどいのは)全く練習していない、
夢の中で自分自身の不甲斐なさに憤っていた。
覚醒しても夢見の悪さが一日中残ることもあった、同じ夢ばかりなので途中から結末が見えるようにもなった「またドジか」って。
夢の科学的考察などできないが、この原因はトライアスロンにきちんと別れを告げなかったからだろうと推察するくらいの知恵はあった、この時訣別のノン・フィクションを書き始めた・・・「あるいはトライアスリートというナルシスト」である。
トライアスロンとの出会いから突然の終わりまで26年間52レースをひとつづつ記録したレース内容に、自分史のエッセンスも取り入れた。
この執筆では、過去に収集していた写真・資料・日記すべてに目を通し、データ化し、元資料を廃棄した。
僕の周りにはトライアスロンの匂いが無くなった、ほとんどだが。
「あるいはトライアスリートというナルシスト」を書き終えた時、もうあの悪夢を見ることはなくなっていた。
其の後、素人小説にまで手を伸ばしているが、夢の中で物語の登場人物が勝手に行動したり、構成変更のアイデアが湧いてくる。
いったい、夢は何のために見るのだろうか?
今現在でも不思議で仕方がない、これが本書を手にした一番の理由だ。


本書の章立てを以下にお知らせしておく:
第1章 夢について考えてみる
第2章 夢をつかむ 黎明期の冒険者たち
第3章 夢の秘密を発見した とフロイトは思った
第4章 新しい夢科学の誕生 睡眠中の精神をのぞく窓が開いた
第5章 睡眠 それは眠気を解消するだけのもの?
第6章 犬は夢を見るのか?
第7章 私たちはなぜ夢を見るのか
第8章 NEXTUP
第9章 夢の中身はひと癖もふた癖もある
第10章 その夢はなぜ見たのか
第11章 夢と内なる創造性
第12章 夢の活用法 その発想と手法、および注意点
第13章 夜中に大きな音がする PTSD,悪夢、その他夢に関する障害
第14章 意識する心、眠りつづける脳 明晰夢の手法と科学
第15章 テレパシー夢と予知夢 あるいは、なぜあなたはこの章の夢をすでに見たのか
第16章 わかっていること、いないこと 知りえないことも含めて、それが重要だ
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