ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日 (2020/11/4)

文字数 1,268文字

2020年10月30日 第1刷発行
著者 ジョン・ボルトン
監訳 梅原季哉 訳 関根光宏、三宅康雄 他
毎日新聞出版



アメリカ大統領選挙の開票速報の流れる中、トランプ?バイデン?激戦の様相になっているが、
現時点で(11月4日午後2時)で結果は判明していない…この時点でようやく本書を読み終えた。
それは偏に本書のボリュームが大きかったこと、ホワイトハウス内の複雑な人間関係、登場人物の位置関係、それらが錯綜するという読書としては決して楽なタイプのものではなかったからだ。

本書出版そのものも、大統領選挙前には実現させたくない大統領府による執拗な妨害行為があり、また新型コロナパンデミックの影響も多分にあったのだろう、日本での出版もついこの間まで遅れてしまった経緯がある。
しかしながらそんな困難の数々もなんのその、国家安全保障担当大統領補佐官の息をのむような
事件対応の毎日は、ここまでドキュメンタリーが公にしていいものかとの想いさえ抱くほどの緊迫感に満ち満ちていた。

本書は著者の執務室「ウェストウィング」に集う閣僚、官僚を整理整頓する補佐官と、そのことに何ら影響されることなく自分勝手に判断し指示するトランプ大統領との滑稽ともいえる執務現実が一番の読みどころになっている。
対外国には強硬な姿勢を揺るがせない著者が垣間見るトランプ大統領の幼稚性が大いに笑える。

これほどまでにメディアに自ら露出しメッセージを発信する大統領はかっていなかった、そのおかげで僕はある程度の大統領の本性を想像することができたが、本書ではその点をしっかりと裏付けてくれた。トランプ大統領は、独りよがりのワンマンな社長でしかなく、アメリカ合衆国という国家を使っての社長ごっこをしているに過ぎない、僕はこれまでに同じような企業トップを何人も見てきている。
自分の評判しか意識になく、自分の評価はどれだけ著名な人間と付き合っているかにかかっていて、個人的な友好関係(見かけであろうとも)を優先し、彼らは自分と親しい友人だと勝手に思い込む。
トランプ大統領が、いかに金正恩、習近平、プーチンたち独裁者に全く弱腰で相手のご機嫌を撮り続けたか、自分だけが優秀だから直接ライバルと話すことが最善だと考えることの危うさ、
行動の基準は何が自分の個人的利益につながるという一点のみ、その他大統領とは思えない発想は、不動産取引の交渉術から一歩も進化してはいなかった。
そんな例証が北朝鮮、ロシア、シリア、アフガニスタン、ベネズエラ、EU各国、日本、韓国、中国との関連で嫌というほどにレポートされている。

満腹感を超えて、食べ過ぎの感覚になった。

著者の下記の言葉が印象深い:
「トランプにとって2期目は1期目よりも政治による制約がはるかに少なくなる。(もう選挙がないということ)、皮肉なことに”レガシー”を残そうとして抑えがきかなくなる2期目のトランプは、保守派や共和党よりも民主党にとって遥かに都合のいい存在になるだろう。これは考えものである。」
ジョン・ボルトン、保守派極めつけの理論家であり強硬派の証だろう。
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