21世紀の戦争と平和  徴兵制はなぜ再び必要とされているのか 

文字数 1,027文字

(2019/3/25)
2019年1月25日 発行
著者:三浦瑠麗
新潮社




「戦争は権力者が始めるものだ。市井の人びとは平和を望んでいる。軍という存在自体が戦争を待ち構える、暴走しかねない装置だ。」
著者はこのテーゼに反証していく。難解な表現はなく、理論は明快であり親切ですらあった。

僕自身、「徴兵制」の必要性をずっと感じていたこともあって、本書にシンパシーをもって接することができたからかもしれない。
本書の目的は、「世界が今、実効的な安全保障、健全な民主主義、すべての階層に望まれるグローバリゼーションの三つを同時に成り立たせる新たな解を求める」とある。
「平和」を概念的なものとしてこねくり回すことなく、我々が実際に持っている利害関係や自然な感情を土台として議論する。
現在の日本の無責任状態(政府から一般市民まで)を改善するための何かを考えたとき、国民国家の一員としての血のコスト、平等な負担共有を体現するものとして「徴兵制」に思い至る。
自国の安全を他国に委ねることは、いくら戦争に負けた結果とは言え、74年は長すぎる。
自分の国は自分で守る、その義務を可能な限り平等な負担にすれば、今の自衛隊問題など解消する。
国民の権利を徴兵制に取り入れることにより、軍は(今の自衛隊は軍に他ならない)人員の待遇改善と同朋意識向上を果たすこともできる。

本書は いかに徴兵制が多様であるかを、モデル国家の実例で説明する・・・韓国、イスラエル、スウェーデン、スイス、ノルウェー、フランス。
徴兵制が戦争を回避し平和を目指すことは、何ら逆説などではなく 民主主義の原点に立ち戻ることだと信じている

本書の章立ては以下の通り:
第Ⅰ部 共和国による平和
第1章 変動期世界の秩序構想
     1.変動期に入った世界
     2.変革期世界の秩序構想
     3.カント再訪
第2章 誰が「血のコスト」を負担するのか
     1.歴史的な政軍民関係
     2.第二次世界大戦後
第3章 「国民国家」と「軍」を見直す
     1.民主国家に求められる改革
     2.正しい戦争の定義を再考する
     3.国民国家の復権
第Ⅱ部 負担共有の光と影
第4章 韓国の徴兵制 - 上からの徴兵制に訪れた変化
第5章 イスラエルの徴兵制 - 原理主義化の危機
第6章 ヨーロッパの徴兵制
     1.スウェーデン
     2.スイス
     3.ノルウェー
     4.フランス
     5.各国の経験に何を学ぶか
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