天地雷動 (2014/5/30)

文字数 637文字

2014年4月30日 初版
著者:伊東潤
角川書店



時代小説がこのところ元気がいい。
時代小説をベースにしたミステリー、コミック、スリラー、恋愛ストーリーなどが
楽しめるようになってきた。
つまるところ、小説はいかにうまく嘘をつくことに尽きるわけであり、
歴史時代小説といってもフィクションの何物でもない。
ところが、なまじ歴史に興味があったりすると、物語の中の「小さな薀蓄」に妙に感激して小説そのものに取り込まれてしまう危険がある。
歴史小説とはまさに教育であり、その時代の歴史認識を象徴するものなのだろうか。

本書は有名な歴史上の事実である「長篠の戦」を舞台にした、群像小説になっている。
武田勝頼、織田信長が競い合うキングの座、それに振り回される羽柴秀吉、徳川家康が
能吏、好人物としてカリカチュアされて歴史を動かしていく。
その対極として、武田軍の足軽鉄砲の悲哀が全編に編み込まれている。

確かに登場人物が多く、長篠の戦場の詳細な描写はカジュアルに読み進めるには
チョイト手強い。
しかし、これが歴史小説的薀蓄醍醐味であって、僕も「長篠の戦」の全貌を初めて理解した
(ような気持ちになった)。

つまり、
勝頼は、無能ゆえに信長軍の鉄砲隊に突入したわけではないこと。
武田騎馬軍 vs 織田連合軍鉄砲、といたっ単純な構図ではなかったこと。
織田軍にありながら、武田軍にはなかった鉄砲の秘話。
等々を知ることにより、信長の人格、勝頼の苦悩が鮮やかに浮かび上がってくる。
これぞ、歴史小説的快感なのだろう・・・たぶん。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み