日米地位協定入門 (2014/3/20) 

文字数 1,478文字

2013年3月1日第1版
創元社
前泊博盛



サブタイトルが「本当は憲法より大切な」とかなりインパクトが強い。
自分も含めて恐らくほとんどの日本人(ヤマトンチュウ)がその実情を知らない「日米地位協定」を暴いて(文字通り)くれる。

「日米地位協定」とは日米安保条約第6条にもとづく基地ならびに日本国における
合衆国軍隊の地位に関する協定であり1960年1月19日に締結された。
さかのぼれば、1951年9月8日サンフランシスコで結ばれた講和条約(平和条約)と
セットで結ばれた旧安保条約が翌

1952428

に発効した。
この旧安保条約と同時に当時はだれも知らない状況下で結ばれたのが
日米地位協定の前身の「日米行政協定」だった。
このような歴史的日付はどうでもいいような気もするが、
現内閣になって

428

を「日本復興の日」と定めた皮肉が痛ましい。
4月28日は、日本国がアメリカの植民地として再出発した
屈辱の日付であるというのが本書のテーマである。

その根拠は現行の「日米地位協定」にある。
この協定は憲法を超えた位置にあり、過去最高裁においても判定の埒外としてきた。
本書は高校生を対象とした内容と自負するだけあって難解な言い回しは一切ないし、
協定の本文も重要部分以外は読まなくてもいいような工夫がされている。
簡便ではあるが強烈な実例がたくさん掲載されている。

◆外務省は在日アメリカ軍の人数を把握していない(入国管理法適用外だから、
直接基地に入ってそこから日本国内に出ていくアメリカ人の数はわからない)
実際に厚木基地にはジャンボ機が着陸しアメリカ本土から軍人、その家族、軍属らが
来日している、入国審査なしに。
また、軍用機に搭乗すれば世界中のアメリカ軍基地に一気に移動できる。
◆厚木基地の警備員(日本人は)銃を肩にして検問所をガードしているが、国内法の銃刀法違反で取り締まることはできない、いわゆる治外法権。
余談だが、この警備員が極めて横柄、現地人をもって現地人を管理する植民地宗主国らしい一面である。
◆米軍(横田基地)で首都圏上空を管理しているため羽田発着の民間飛行機は大幅な回り道をしている。
◆航空法の適用除外のため米軍機は低空で飛行でき騒音の責任を負わない。
◆在日米軍、その関係者に関して日本は裁判権を放棄している、だから彼らは平気で犯罪を起こしている。

まぁ、このような話、条文とその裏にある密約、また恣意的運用の裏マニュアルなどが紹介されている。
明治時代の不平等条約を実感したことはないが、現行の「日米地位協定」は不平等条約の典型である。
一言でいうと「アメリカが日本の中に軍隊を配備し続けるため」の協定。
今は沖縄、神奈川に集中しているが、日本全国どこにでも適用できる。
そしてこの恐怖の現実に輪をかけているのが、
外務省はじめ関係省庁の官僚、政治家たちがこの問題に触れないようにしてきたことだ。
多くの国民が知らないところでアメリカに植民地化されている。
その影響が実は、普天間基地移設、原発再稼働、尖閣問題、TPP参加問題、憲法改正などに大きく深くかかわっていることが絶望的でもある。

昨今のトピックスで言えば、
ロシアのクリミア独立併合に関してアメリカと同調しロシア制裁に加担する現内閣、
ついこの間まで個人的信頼関係で北方領土返還は間近・・・などと言っていたのを、
ぴしゃりと封じられてしまった。
日韓会談も米大統領にセットされた様子だ。
このような絶望的局面を打破するには、日本人一人一人が先ず現状を正しく知ることだろう。
アメリカ追従が愛国者などというおかしな逆転に惑わされてはいけない。
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