ここから世界が始まる トルーマン・カポーティ初期短編集 (2019/8/16)

文字数 749文字

2019年2月25日発行
著者:トルーマン・カポーティ  訳:小川高義
新潮社



「ティファニーで朝食を(1958年)」、「冷血(1966年)」の著者カポーティの短編集だが、これらが彼の十代の作品とくれば驚くしかない。
村上春樹さんが彼をしてモーツアルトに例えて神童と称するのもよくわかる。
本短編集には14編が収められている、すべて今まで未発表のものである。
その14編からは匂いだすような少年の爽やかで素直な感性の息吹を感じ取ることができる。

■「別れる道」 :少年の深い心遣い
■「水車場の店」 :恋人の淡い面影
■「ヒルダ」 :悪魔のささやき
■「ミス・ベル・ランキン」 :美女の一生
■「もし忘れたら」 :本当の恋心
■「火中の蛾」 :取り返すことのできない過ち
■「沼地の恐怖」 :足りなかった勇気
■「知っていて知らない人」 :死の甘い幻想
■「ルイーズ」 :嫉妬と高慢
■「これはジェイミーに」 :怪しい翳りの猫
■「ルーシー」 :小さな憧れ
■「西行き車線」 :カタストロフィーに集まる
■「似た者同士」 :ホラーノワール
■「ここから世界が始まる」 :すべては自由に生きること

以上各短編に僕の勝手な一口感想を記してみたが、14篇すべてが一つの小説のアイデアになっている。これをして習作というべきなのかもしれないが、習作という枠を大きく超えた物語の起点・核がちりばめられている。

「ティファニーで朝食を」と「冷血」しか読んでいない僕としては、その後の作品との対比を論ずることはできないが、この十代の短編集から、カポーティのその後の作品を推し量ることは簡単だ。
ただし、若くして天才といわれ、常にマスコミの注目の的にされたカポーティの心の弱さについては、本短編集のナイーブさがどのように育まれたのか? と興味が尽きないところだ。
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