黄色い家 (2024/3/27)

文字数 702文字



2023年2月25日 初版発行 12月30日 8刷発行
著者:川上未映子
中央公論新社

英語タイトルは「SISTERS IN EYELLOW」、いったい黄色が象徴するのは何だったか?
宣伝コピーには(ノンストップ・ノワール小説)とあるが、ぼくがイメージするノワール小説とは違っていた。
プロフェッショナルな英知が集結して、たっぷりの資金とプランのもとに豪勢な獲物をし止める・・といったドライなものから対極にあるじっとり湿った、社会の底辺に巣くうしか生きる術のない女性たちの切ない切ない、ちっぽけな犯罪が細部にわたって丁寧に語られる。

黄色は、ずばり「お金」を意味する。
お金を手にするために僅かな給料で生きるしかない女性たち(SISTERS)が、夢を実現させるために共同生活を始める。
主人公はじめSISTERS 4人は皆それぞれ自分では修正できないハンディキャップから、今までずっと現実に流されるままに生きてきた。
ほんの小さな希望を見つけた主人公が夢(黄色の家)に到達するため働き、消耗し、挫折する、哀しい物語、まるで救いはない。
SISTERSに接するのは、ろくでもない輩ばかり、当然のように闇の勢力に助けを求める主人公、他にお金を得る方法がなかった。

物語は新型コロナパンデミックの最中に、20年前の過去に遭遇し、1999年、2000年のエピソードが語られ、また2020年に戻るオーソドックスな構成でありながら、貧困がもたらすであろうありとあらゆる不幸が詰め込まれている。
養育放棄による家出、高校中退、恐喝、援交、あらゆる負のパワーが襲いかかる。

富の格差などという格調高い言葉では説明できない、貧困ノワール物語だった。
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