怒り (2016/6/7)

文字数 519文字

2016年1月25日 初版発行
著者:吉田修一
中公文庫



常に進化し続ける作家、吉田修一さんには、いつも驚かされる。
最新作「橋を渡る」ではついにアポカリプスSFにまで行ってしまったものだ。
本作は2年前に発表、今年文庫化された。
間違いなく、実際にあった殺人犯逃亡事件にヒントを得ているが、
その内容はある意味では彼の集大成クライム・ラブ・ファミリー物語だった。

物語では3個の愛の形が同時進行する、そのキーが「逃亡殺人犯」。
都心、千葉そして沖縄離島で展開される「愛と信頼」の変形パターンはさすがに手慣れたものだ。
人間の奥底に潜む矛盾、制御できない弱さを、これでもかと追及していく。
娘を、恋人を、友人を信じる、信じられない、裏切られる・・・
僕たちはそんな繰り返しで毎日を生きているのだろうか?
上質な群像ミステリー&ラブストーリーになっている。

本作が今秋映画化される。
監督 李相日、出演 渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、妻夫木聡、高畑充希の豪華メンバー。
元々吉田作品は映像化しやすいものが多いのだが、
誰が顔を変えた逃亡犯なのか?という映像化に興味が高まる。
もっとも本作は犯人捜しよりもその事件に巻き込まれる複数の愛と信頼の物語ではある。
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