極夜行 (2018/7/11)

文字数 777文字

2018年2月10日 第1刷 3月30日 第2刷
著者:角幡唯介
文藝春秋



地球上には極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間がある。
著者が「極夜」にひきつけられたのは太陽のない長い夜はどんな世界なのか?
そして極夜の果てに昇る最初の太陽をみたとき人は何を思うのか?
現代システムを脱する…という大看板を掲げて敢えてアナログで挑戦する冒険旅行譚だった。
曰く:太陽があることが当たり前になりすぎ、太陽のありがたみを忘れ去った現代社会にとって未知のものがあるのでは?
…なるほど、僕はそんなことを気づきもしなかった。

北極最緯度地点、太陽のない「極夜」を選んでの80日間のノンフィクション旅行記、
著者自身も触れているように、単独体験なので真実かどうか、適用にフィクションが混ぜてあると思われても仕方がないと。
そのくらい興奮に包まれて読み進ませたいただいた、たとえフィクションであってもかまわないとすら思った。
著者の饒舌は真っ暗闇の極夜なのに、あるいはだからこそますます冴えわたってくる。
極夜に月が昇る瞬間、ブリザードの想像を絶する音、闇に付きまとう死の恐怖、ことごとく失敗する事前準備、犬との本当のパートナーシップ、そして圧巻の太陽との再会。

僕はもともと探検ノンフィクションにあまり期待していなかった。
つらい、苦しいを耐え、幾たびかの危険を乗り越えて栄光の帰還を果たすのだろう
…ぐらいの予想だった。
むろん、探検冒険譚とはそういうものであり著者はプロ文筆家でもあるから極夜行は間違いなく興味深いものだ。
実は本作の第1章は著者の娘子お産シーン、冒険ノンフィクション作家だとばかりに思った
僕は面食らう。
これが、「極夜行」に魅入られた著者の、いや人類の創生のロマンにつながることになる。
骨太の探検物語だけではなく、思弁的、哲学的な帰結に僕は導かれる。

久々のノンフィクション大作だった。
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