バトルランナー (2014/5/23)

文字数 595文字

1989年7月第1版、2006年8月第13版
著者:スティーブン・キング (リチャード・バックマン) 訳:酒井昭伸
扶桑社ミステリー



「キャリー」でベストセラー作家になったスティーブン・キングが「バックマン」名義で
1982年に発表したSFディストピア小説。
キングの名前ではできない作品を書きたいというより、単純に仕掛けを楽しんでのゴーストライター遊びのようである。

近未来の富裕層と極貧層の格差世界、そこで金を稼ぐため富裕層の「死のゲーム」に参加する主人公。
ほぼ全編、TV番組「ランニングマン」中継の中での主人公の逃避アクションが描かれている。
現状への強い嫌悪、権力にたいする反抗心の発露・・・・なるほど当初はキングといえども出版にはリスクがあったことだろう。
ディストピア小説のバイブルであるオーウェルの「1984年」の影響も窺うことができるが、本作には思想的思惑はない。
TV番組が公に殺人を認められて視聴者(極貧層から選抜)参加で、死の鬼ごっこを中継する。
それを富裕層のみならず味方であるはずの極貧層までもが楽しみとしている不条理がある。
そして血にまみれた圧巻のラスト暴力シーンがようやく僕にカタルシスを感じさせてくれる。

近年、所有の格差は拡大し、人々の興味は多様な娯楽に費やされている。
そして最近、この類いの小説、映画がまた目につくようになってきた。
見事に30年後の今を予見していたSF小説だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み