罪の轍 (2020/3/8)

文字数 779文字

2019年8月20日 発行
著者 奥田英朗 
新潮社



新聞広告で刺激されて衝動的に購入した・・・結果としては失敗だったが、
たまにはこんなこともいい教訓となるかも?

7年前、ブックレビューを本格的なものにした折には、蔵書を整理・廃棄することを優先して新規で読んだ書籍をため込まない基本方針だった。
すなわち、
読み終わった後、躊躇なく処分(売却)できるためにもレビューを書き残すことにした。
それと同時に新規のフィクションに関しては、ご贔屓作家のものに集中することを原則とした、
このご贔屓作家が思いのほか大勢なのはまた別の問題ではあったけど。

しかし人間は弱い生き物である。
特に興味を持っている「警察小説」に話題作、またはそのように思われる作品を目にすると落ち着かなくなる。本作は新聞広告(第2面下5段)で目に留まった、その宣伝コピーは「これぞ、犯罪ミステリーの最高峰」。著者の作品は今まで手にしたことはなかった、まさに初お目見えだった。繰り返しになるが、こんなこともあるのだ、長い人生のなかでは。

物語りは、かの有名な「吉展ちゃん事件(1963年)」がベースになっている。
僕自身にも記憶があるくらいの大きな事件だったが、すでに60年近くも昔の誘拐事件を今頃蒸し返した意味が不明だと思った。
オリンピックを翌年に控えた東京の開発状況、警視庁の前近代的な捜査技術、類型的な捜査本部の刑事たち、犯人の極端な不遇の生い立ち、彼らにかかわる朝鮮人一家の憤りなどは表面をなぞった程度のノスタルジアしか僕には感じられなかった。
事件の真相はともかく、犯人、その愛人・友人、刑事、それぞれの家族、新聞記者たちが深く描かれていないという不満がずっと付きまとっていた。

警察小説としても、社会派ミステリーとしても、物足りない出来上がりだった。
決して「犯罪ミステリーの最高峰」ではなかった。
反省している。
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