情事の終わり (2014/6/26)

文字数 457文字

2014年5月1日 発行
著者:グレアム・グリーン 訳:上岡伸雄
新潮文庫(名作新訳コレクション)




何度もノーベル文学賞の候補と騒がれながら結局受賞できなかったグレアム・グリーンの永遠の名作が新訳となった。
グレアム・グリーンと言えば「第三の男」で戦後日本でも幅広く認知された作家だ。
作家としてだけではなく、英国MI6で諜報員の経験もあることから純文学の作家でありながら
娯楽性を振りまいた特異な存在だった。

本作品は、彼の実体験に基づいたといわれる奔放な女性と付き合う作家の苦悩と、
愛と宗教のせめぎ合いを描いた、その意味合いでは大衆受けするテーマを扱っている。
とはいえ、人妻との愛のライバルとして、カトリック教を選んでの葛藤と精神の磨耗は
軽やかに読み進むこともできない。
バトル・オブ・ブリテンを生き抜いた無宗教の作家が生きる望みすら失う経過を、
読み進むうちにともに経験する。

いつの世にもある、間抜けな愛情劇だろうが、そこにこそ生きている興奮があるのだろう。
徹底的に「神」を否定する主人公に、忍び寄る「神の奇跡」が愉快だった。
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