炎と怒り トランプ政権の内幕 (2018/3/9)

文字数 1,847文字

2018年2月20日 初版印刷 2018年2月25日初版発行
マイケル・ウォルフ
早川書房



タイトルの「炎と怒り」は、
2017年8月8日トランプが夏休み返上で仕事をしていると思わせるための記者会見での言葉・・・
《 北朝鮮は、これ以上アメリカを威嚇するのを止めた方がいい。さもなければ、世界が
  これまで見たことがないような炎と怒りを目の当たりにするだろう。・・・・・云々》
好戦的とはいえかってなかった厳しい態度のリーダーの発言のようにも受け取れる、ただしこれが即興の思い付きでなければ。
日本に届くTV映像、特にトランプのツイッター発言から一般庶民の僕が判断すると、トランプは単なるお馬鹿さんとしか思えない。
しかし、アメリカでは30%の堅い支持率があり知人(普通の生活者)の意見はトランプに好意的だ。そこにこの爆弾のような暴露本が手元にある。
著者がどうしてこれほどまでにホワイトハウス内の出来事を取材できたのか?
そこにまた、トランプ政権の生い立ちの脆弱さというか信じられない摩訶不思議がある。
端的に言えば、選挙本部も政権移行チームも新政権そのものも混乱のなかに在ったから、このようなルポが可能だった。
もっと言えばその混乱はいまも継続し悪化している。

本書冒頭で僕の懸念は解消される。
《トランプは勝つはずではなかった。というより敗北こそが勝利だった。
 負けてもトランプは世界一有名な男になるだろう・・・ ・・「いんちきヒラリー」に
 迫害された殉教者として。 娘のイヴァンカと娘婿のジャレッドは富豪の無名の子どもという
 立場から、世界で活躍するセレブリティ、トランプ・ブランドの顔へと豪華な変身を遂げる
 だろう。バノンはティーパーティ運動の事実上のリーダーになるだろう・・・・・》

僕の誤解も解消されていく。
大金持ちトランプの道楽選挙だと思っていたが、なんとトランプは選挙に私費を一切投じていない。勝つつもりがないのだから、私財を使っても無駄になる、その通りである。
選挙対策本部も実際に機能していたことはなく、ただ一人トランプはビジネスの延長として
多くの遊説をこなす。そして大統領になってしまったトランプ。

本書では大統領官邸上級スタッフの中での勢力争いが克明に延々とレポートされる。
そのメインストリームは家族スタッフ(イヴァンカとジャレッド)対バノンに集約される。
そのバノンが2017年8月に辞任するところで本書は語り終えているが、その間 解任、辞任した上級スタッフは以下の通り:
プリーバス首席補佐官解任、ウォルシュ次席補佐官辞任、スパイサー広報部長辞任、ダブキ広報部長辞任、スカラムーチ広報部長解任、フリン国家安全保障担当補佐官辞任、ルワンドウスキ選対本部長解任、マナフォート選対本部長解任、
本書を読んでいるさなかの先週にはヒックス広報部長辞任表明があった。

多くの人材が入れ替わっているなかで、ホワイトハウスの顔というべき広報責任者の交代が頻繁なのが問題だろう。実はトランプのツイッターはほぼ本人の衝動的感情で発信される、スタッフのチェックはない。スピーチライターも実際にはいないも同じ、原稿を読むときのトランプは不機嫌な様子だという。

といってトランプに深い見識があるわけでもない、いや常識すらないかもしれない。
本を読んだことがない(おそらくは本書も読み切っていないと思われる)、文字で情報処理する能力に欠けているため、あるスタッフはトランプが読み書きできないのか、失読症ではないかと疑っていた。
そして読まないだけでなく聞くこともしない、常に自分が語る側になることが好きだった。
彼のスピーチは同じことの繰り返しが多く不評だという、日本での限られた映像からでもその様子は想像できる。
あの手振りの幼稚さはどうにも我慢ならないし、話しっぷりの傲慢さは耐えがたい、まして繰り返しなど・・・。

トランプは夕食後鍵をかけて立て籠もる寝室には3台のテレビが写され、彼は映像から情報を集める。そこから話を黙って聞いてくれる友人たちに電話をするのが極上のひとときだ、ハンバーガーを手元に置いて。

そしてコミーFBI長官の解任から発展するモラー特別検察官の調査活動。
いまや、弾劾か、辞任の危機のあるトランプ。
二期目は無いし、本人もその気はない。

そんなトランプに「北朝鮮との交渉」を任せるわけにはいかない。
この一週間の北朝鮮問題の急激な対応に大きな危惧を感じる。
外交のことなど全く興味のないトランプにこの重大な危機を任せてはいけない。
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