汝、星のごとく (2023/5/7)

文字数 785文字

2022年8月2日 第1刷発行 2023年3月24日 第6刷発行
著者:凪良ゆう
講談社



「流浪の月(2020)」に続いて著者二回目の本屋大賞作品。
何回も申し上げているが、本屋大賞は書店員さんが売りたい、お薦めしたい・・というランキングであり世間の趨勢を推し測るにもってこいの選考だと思い、毎年ご祝儀の意味と同時に時代をキャッチするために大賞作だけはありがたく拝読している。

三年間ノミネートされ二度大賞ということを素直に評価するならば、いかに著者の感覚が書店員さんが求めるものを捉えている、その顧客(読者)の欲するものに合致しているかということに尽きるだろう。

前回受賞作(流浪の月)がいくぶんエキセントリックな男女愛をテーマにし、プロローグがエピローグに鮮やかに終結していた記憶がある・・・と思い出しながら、本作でも同様な奇妙なプロローグに接し、いやが応にも既視感いや既読感に襲われる。

物語は前作同様のエキセントリックな男女愛だけど、使われているモチーフすべてが平凡であり、別の意味での既読感に苛まれる。
プライバシーのない閉鎖的な小さな島、両親に問題を抱えるヤングケアラー男女高校生、コミック作家を目指す少年、島から脱出することだけを願う少女、遠隔地恋愛の果ての破綻、伝統としての女性差別、性志向差別、無責任なネット批判、成功から転落、死を見つめての真実の愛、生きる自由・・・・・などなど古今東西の琴線触れエピソードが散りばめられていた。

一言で言うと変哲のない悲恋物語、過去腐るほど語り継がれてきたジャンルの最新ヴァージョンともいえる。陳腐なテーマにタイムリーな話題をトッピングしたものではあるが、ぐいぐいと読ませてしまうパワーに引きずられてしまう。

何事も論ずることなく、何物をもメタファーすることなく淡々と愛のすれ違い語る本作。
本屋大賞のあるべき姿を見せつけられた気がした。
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