月の満ち欠け (2017/8/11)

文字数 567文字

2017年4月5日第1刷発行 2017年7月25日 第4刷発行
著者:佐藤正午
岩波書店



本年 直木賞作品は「生まれ変わり」をテーマにした小説。
小説の本質が作者の生まれ変わり願望だと偏見すれば、このテーマはあまりにも率直、
実際に多くの作家が手を染めている。
佐藤正午さんが敢えて生ぬるい素材に手を出し、直木賞を手にした。
当然ながらこのテーマはといえば、SF、ファンタジーが色濃くなってしまうものだが、
本作は徹頭徹尾「恋心、愛情」を追求する。

恋しい男に再会するため「生まれ変わり」を繰り返す
・・・ここまでは過去あまたの物語にもあった。
生まれ変わりの主人公【瑠璃】は短期間で複数回生まれ変わりを実行する、
なんと業の強いことだろう。
そして、それを辛抱強く待ち続ける男。
ただし展開は単純ではない、当然ながら。
生まれ変わり4回における人間関係が意図的に狭い範囲で紡がれていく。
ご都合主義ということもできるが、読み進むうちにそうでもない気になってくる。
伏流となっているそんな家族のなかに芽生える、ふとした疑問と希望・・・生まれ変わりが身近になる瞬間だった。

物語展開の都合で詳しい内容は明らかにできないが、さわやかな読後感に浸れることは間違いない。
生まれ変わっても恋しい人に逢うことの大切さが、現生の薄情をメタファーしているとすれば、ちょっと悲しくなった。
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