鳴かずのカッコウ  (2021/4/17)

文字数 685文字

2021年3月2日 初版第1刷発行 3月24日第3刷発行
手嶋龍一
小学館



今朝がた、日米首脳会談(バイデン・菅)の模様が報じられ、
対中国への厳しい姿勢の共同声明が発せられた、日本の外交の大きな転換点になるやも。
本書は、そんな米中確執の大きなうねりを インテリジェンス(諜報)から見た快作になっている。
主人公は公安調査庁職員の脱力系男子、安定した一生を願っての公務員志望だったが、
おかしな経緯で公安調査庁に配属され、他人には自分の身分すら大っぴらにできない毎日。
小説の筋立てとしては、役に立たない小役人が最後には大手柄を立てるというサクセス・
ストーリーのようにも想像してしまったが、弱小インテリジェンス機関の悲哀にめげず、
インテリジェンスの深みにはまっていく主人公が、最期に最強のエージェントになっていく
過程にまんまと僕は取り込まれた。

物語りの舞台は神戸、英国スパイ小説の趣をふんだんに取り入れたエキゾチックな街並み、
外国人居留地がそこに存在する違和感なき自然、有能な仲間たち、多数の怪しい調査対象者、
「情報」だけに集中する展開、すべてこれらは今過剰なポリス小説にうんざりしていた僕には新鮮だった。

小説の性質上 荒筋を説明するのことは控えるが、ロシア、北朝鮮、中国、アメリカ、ウクライナ、イギリスをめぐる諜報合戦は、スケール感とともにいくぶん過剰なディーテイルに裏付けされ、「噓臭さ」は全く感じられない。

著者にとっては11年ぶりの新作とのこと、長い時間の取材と構想が読み取れる。
続編を期待したいと思う、もしかしてすでに出来上がっているのかもしれない。
そんなエンディングだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み