村上海賊の娘 (2014/4/15)

文字数 892文字

2013年10月第1版
新潮社
著者:和田竜



本屋大賞を復習すると、
本賞は書店員の投票によって選ばれた「一番読んでもらいたい本、売りたい本」コンテストであると承知している。
ベストセラー賞が販売結果だとすれば、本屋大賞はマーケティング企画と受け取ることもできる。
いずれにしても、文学面からは対極のエンターテイメントコンテストではあろう。
本は読んで面白くなければ意味がないというのもよーくわかる立場としては、
本屋大賞をミーハーと無視するわけにもいかない。
実際に、大賞作11作のうち、1作だけを別にして
何のかんの言いながら10作は読ませていただいた:
●博士の愛した数式
●夜のピクニック
●東京タワー~オカンとボクと、時々オトン~
●一瞬の風になれ
●ゴールデンスランバー
●告白
●天地明察
●舟を編む
●海賊と呼ばれた男
●村上海賊の娘

「村上海賊の娘」の作者、和田竜さんは「告白」大賞時の次点であった「のぼうの城」から
4年間本作執筆に注力したとのこと。
歴史の中の小さいけれども、重要なエピソードを拾い上げ、ディーテイルに凝り方固まる手法は前作以上に磨かれてきている。
今作でも、日本史ではあまりポピュラーではない瀬戸内海賊と、泉州海賊の海戦の詳細を
徹底的に描いている。
その背景には織田信長の天下統一と、それに抵抗する一向宗大坂本願寺との
歴史的抗争が控えている。
一向宗派を支援し信長に対抗する毛利家、その毛利家の水軍の要である村上一族が
作品の主役である。

村上一族の景姫がタイトルどおりの主人公。
スーパーガールの武辺を持ちながら、伴侶となる海賊の男を探して「大坂本願寺の戦」に巻き込まれるというファンキーな設定が愉快極まりない。
単行本表紙からもうかがえるように歴史事実を細やかに収集した一方、
語り口はコミック調になっている。
漢字の多い史書からの抜粋と、SFXのような場面描写がまじりあって奇妙な融合を醸し出している。
「のぼうの城」の時にも感じたが、ファンキーに歴史を読み解くのに力尽きて、
最後に物語のカタルシスが感じられないのが残念だった。
本屋大賞としては低調な出来だったのか、それとも僕の感性が古すぎるのだろうか。
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