バラカ (2016/3/10)

文字数 594文字

2016年2月29日 第1刷発行
著者:桐野夏生
集英社



桐野夏生 復活の、待望の一冊です。
「だから荒野(2013年)」以来低迷していた、いや沈んでいた桐野ワールドに灯が見えてきました、それもあのどす黒い灯が。
物語は2011年から2019年の日本が舞台の、ポスト・アポカリプス風味満載の近未来を描いています。
狂言回し役は、ずばり「福島核発電災害」です。
発電所爆発による放射物質汚染地域で発見された幼女バラカをめぐる壮絶なミステリーになっています。
作者の意図しているのは、ディストピア状況におかれた日本で誠実に生きるある種の抵抗・開放運動を描くことで、この国の将来に警告することです。
そこでは、東日本は放射能汚染で捨て去られ、大阪遷都、そして大阪オリンピックに沸く日本があります。
2019年時点でまだ多数が仮設住宅に暮らし、放射能汚染の実態が隠蔽され、東日本は忘れ去られていきます。
「1984年(ジョージ・オーウェル)」を思い出す国家管理体制や大量の外国人労働者による社会崩壊は、僕にはデジャブのようでした。
果たしてこれは未来なのか、現在なのか?

思い切りの良い、破滅ストーリーは桐野ワールドの持ち味です。
加えて、反原発弾圧というホットな政治問題を今作では扱っています。
バラカをめぐる登場人物も多彩です、桐野ワールドのダークな面々に魅了されてしまいます。
待ちに待った、桐野夏生の毒をご賞味ください。
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