007白紙委任状 (2015/8/19)

文字数 1,053文字

2014年10月10日 第1刷
ジェフリー・ディーヴァー
文春文庫



007ジェームス・ボンドの生みの親、イアン・フレミングが無くなったのは1964年、
それまでに彼が残した長編は12作のみでした。
このスパイキャラクターは冷戦下の世界情勢を反映したスパイシネマとして、
主演のション・コネリーの魅力とともに一気にドル箱シリーズになりました。
その後シネマは原作とは別の進化を遂げています、
直近ではダニエル・クレイグ演じるジェームス・ボンドが4作目を撮り終え
12月公開を待つばかりです。

一方で、小説については、フレミング財団が公認した作家(錚々たる著名ミステリー作家)が
新作を書き継いできていますが、僕は手を付けないままにきていました。
イアン・フレミングでない007に何の魅力も覚えなかったからです。
そして、とうとう新作作家としてジェフリー・ディーヴァーが指名されたのが本作品です。

単行本として2011年11月に刊行され2014年に文庫化されています。
著名作家による一回限りの007ジェームス・ボンドですが、今作はオリジナルを継承できるところは極力残しながら21世紀の007が生き生きと甦っています。

ダブルオー(00x)セクションは、MI6の外部組織ODG(海外開発グループ)に所属しており、オリジナル当時の冷戦華やかなころに比べると、表舞台から隠れた存在になっています。
とはいえ、「007は殺しの番号」というキャッチフレーズ通り海外防諜活動では絶対的権限を持っています、
タイトルの白紙委任状はそれを象徴した言葉です。
今作の007のカタキ役は、世界規模の廃品処理業者というのも現代的でしょう。
無論、局長のM,副官のマニペニー、Q課、CIAのフェリックス・ライターなども
確りと引き継がれていますが、
スマホにQ課特製のアプリを使用してのスパイ活動などは今風の極地です。
活動場所がセルビア、南アフリカというのも現代の複雑な世界情勢を表現しています。
そして、僕が注目したように、ジェフリー・ディーヴァーを起用したのには
「どんでん返し」のお楽しみがあるはずです。
スパイアクション小説プロットにおいて、相変わらずの美女とのアバンチュールにおいて、
そして両親の不可解な事故死にまでさかのぼるトラウマにおいて「どんでん返し」を堪能できます。
イアン・フレミングの香りをいっぱい含みながら現代に生き返ったジェームス・ボンドと再会し、一気に若い日々に戻ることができました。
なによりも上質なアクションミステリーを味わうことができたのは幸せでした。
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