ファンタジスタ (2020/7/26)

文字数 849文字

2003年3月30日 第1刷発行
著者 星野智幸
集英社



エキセントリックな中編作が3作収められている、
●砂の惑星
●ファンタジスタ
●ハイウェイ・スター

「砂の惑星」はデューンではない、まるで関係もない、一応念のため。
森にすむ亡霊に惹かれる新聞記者が主人公だが、他の2作にも共通する合理的な展開は全くなく、学校給食毒殺事件、ホームレス、ドミニカ移民の悲惨…が混在して展開されるので、そこに何かの比喩を嗅ぎ取ろうと思って努力してみたが途中でやめた。
書かれている文字を追っていくとなにやら異世界を彷徨う。
宣伝コピーは《 砂に触れられたものは、砂に変身する》

「ファンタジスタ」は近未来ポリティカルSFの形体をとってはいるが中身は本作品集コンセプトであろう支離滅裂、書き放題の難解ストーリー、というか、ストーリーはそもそもないのかもしれない、やはり感覚で読み取る類の物語、だとすればタイトル通りのファンタジスタが一番正直な表現だったと思える。
サッカーがテーマになっているので専門知識への嫉妬を感じるのも、この作品らしい意地の悪さだった。
宣伝コピーは《 見せかけの、借り物の私は、今何色だろう?》

「ハイウェイ・スター」に至っては支離滅裂の極み、これはある種のドラッグ小説なのか?と思いながらも3作目にもなると、もはやなるようになれと読み進むうちに、感覚だけでも察知できるかなと思っていたことすら裏切られる。
暴走族らしき少年がマトリックスワールドに似た飯場で稼ぐ夢見のような体験は、ついていくだけが精いっぱいだったが、ほとんど悪い夢のような内容だった、もしかしたら著者の見た悪夢そのものだったのかもしれないけど。
宣伝コピーは《 どうせやるなら宇宙暴走だな。究極の暴走族、最後の暴走族だ》

ということで宣伝コピーがいちいち的外れだったことが一番の収穫だったけど、もう一方の宣伝コピーである:
《 安っぽい嘘。だけど真剣な嘘。正真正銘、本物の嘘-架空の私たちの物語》が
適切な解説に近い、もっとも小説はもともと架空のものだけどね。
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