世紀の空売り (2016/2/26)

文字数 1,035文字

2013年3月10日 第1刷、2016年1月25日 第4刷
著者:マイケル・ルイス  訳:東江一紀
文春文庫



シネマファンでいると、ときどき得することがある。
3月4日公開の「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を楽しみにしている反面、
舞台となっている2008年のリーマンショックの実情を良く知らない。(ちなみに本シネマは、作品賞、監督賞、助演男優賞にノミネートされている。)
無論、リーマンショックがサブプライムローンの破たんから生じたくらいは知っていたが、
シネマ題名や予告編にある金融界を相手に戦った4人の話は初耳。
そして、本原作は「マネーボール」の作者でもあるマイケル・ルイス
とあれば読むしかなかった。

著者マイケル・ルイスはソロモン・ブラザーズの債権セールスとして働いていた時、
会社の内面を暴露する「ライアーズ・ポーカー」で作家デビュー。
そんな知識と金融界への反骨精神、綿密な取材で本作の中で「リーマンショック」の実態を暴いてみせる。
儲けた時は自分のもの、損したときは納税者のものという詐欺的なビジネスモデルの
巨大銀行vs三つのヘッジファンドと一人のトレーダーの闘いだった。
住宅ローン担保証券(MBS)を束ね切り刻んだ新たな住宅ローン債権CDO(Collateralized Debt Obligation)が返済能力の乏しい人のローンから作られる。
この金融商品にムーディーズやS&Pなどの権威ある格付け会社が、確たる理由もないまま国債並みの評価を与える。
なぜなら、住宅ローンは過去破綻したことがなかったからというだけ。
そして、実はこれらの商品の詳細について、また自分の仕事について誰もが理解していなかったことが大きな間違いだった。
もしくは、クズの寄せ集めの商品に疑問を抱いたとしてもそれは金融業界者には関係のないことだった。
その欺瞞に気づいた4人(グループ)はCDS (Credit Default Swap)というデリヴァティブを思い付き投資銀行に提案し、そして大量に買い付ける。
そう本作の原題は「THE BIG SHORT」、空売りだ。
そもそも、なぜ不良債権がトリプルA に格付けされたか? 
そんなCDOのCDSを誰が売ってくれたか?
なんの分析もせずバスの乗り遅れないようにと機関投資家たちが衝動買したのはなぜか?

巨大金融界に挑む、4人のギャンブルは、実話だあるだけに身に迫る緊迫感に満ち溢れていた。
一攫千金は夢のまた夢なのか、それともすぐそこにあるものなのか?
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