雪の階(きざはし) (2018/7/5)

文字数 538文字

2018年2月10日 初版発行 4月5日 第4版発行
著者:奥泉光
中央公論新社



「東京自叙伝 (2014年)」で東京に巣食う地霊の物語に狂感した奥泉光さんの新作。
帯の宣伝コピー【ラストシーンまで一気に駆け抜ける、ミステリー・ロマン】
はまぎれのない真実。ロマンを標榜してはいるが、登場する女性たちは頭脳、胆力、霊力、いずれにも卓越した時代の寵児。

時代背景は2・26事件に至るまでの戦争の時代の入り口、えも言われぬ高揚と不安が錯綜する。
主人公は伯爵令嬢 笹宮惟沙子、親友の情死事件を調査するところから、この壮大なミステリーが始まる。
令嬢の「お相手さん」だった女性カメラマン千代子がその調査に乗り出す。

物語では天皇機関説騒動、陸軍皇道派・統制派の争い、人種醇化などの当時のきな臭い事件が背景に織り込まれる。一方では惟沙子、千代子の恋愛・結婚問題が調査の過程に顔を現せて小説の愉悦を増してくれる。
特に惟沙子の聡明な頭脳と予期できない行動力は、昭和初期の時代には受け入れがたい存在として痛快。
惟沙子の霊能力ごときひらめきも相まって、ミステリーからファンタジーへ変容する中盤。

そして最後の最後でのお決まりのミステリーの謎解きと大団円。
エンターテイメントがぎっしり詰まった長編作品、堪能できた。
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