追憶の雨の日々 (2022/6/6)

文字数 925文字

2009年8月21日 第1刷発行
著者:浅倉卓也
宝島社



2022年6月6日梅雨入り、
こんな日に読む本のタイトルとしては申し分ない「追憶の雨の日々」、というほどロマンチックな経緯はない、忘れ物「積読シリーズ」第二弾である。

荒筋を敢えて述べると、
中学生時代に仲の良かった女子と15年ぶりに遭遇する男の三か月の夢のような物語。
とくれば、浅倉さん代表作にしてデビュー作の「4日間の奇跡(2003)」を思い出してしまう、
積読にしてはしまったが、本作が手元にあるのは、ひとえに「4日間の奇跡」余波である。
15年ぶりに出逢った女子は高級コールガールとして男の前に現れるところから、悲劇がゆっくりと幕を開ける。
著者は物語りのカタストロフィーを途中で何度も示唆する・・・「後になってわかるのだが」とか「これが最後の云々」など・・・読み手に期待を持たせないぞ!という決意のようなものが文脈に染み出てくる、そのたびに読み手の僕はうんざりする。
ろくでもないエンディングならさっさと読み終えてしまいたい焦りのような気持ち、そうはいってもどこかで大きなターニングポイントがあって悲しみを回避してほしい気持ち、二つの相反する感情に苛まれる。

タイトルにある、「雨の日々」は女子に出逢った時も、別れた時も雨が降っていたという意味くらいだが、女子が手にしていた真っ赤な傘の印象が僕には強烈だった、タイトルも「赤い傘」でもいいくらいだ、せめてタイトルだけでも輝かせてほしいほ高湿度な暗さだった。
かように、厭世版ボーイ・ミーツ・ガール恋物語なので、はっきり言って僕には愉しみのない読書となる。
愛の3ヶ月、男が心惹かれる点が女子の料理という安直がうら寂しい、中学生の時ヴァイオリンを習っていた女子がどんな15年を苦悩したのかも一切説明されないのはまだしも、男が心すべてを許す理由が淡い初恋の思い出というのが、奇跡のようだった。

平たく言えば書類を作る仕事だと司法書士の自分を卑下する覇気のない男が生きる力に目覚める。
男の生きがいとなる女子は、全く過去も現在も不明だが燃え尽きるかのように瞬間を生き抜く。
3ヶ月の愛は、そうすればやはり奇跡なのか?
「4日間の奇跡」を引きずり続ける著者がいて、僕がいた。
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