ガラパゴス (2016/4/11)

文字数 783文字

2016年1月31日 初版第1刷発行
著者:相場英雄
小学館



一風変わった社会派警察小説に巡り合った。
近年の過剰な警察小説ブームの玉石混合著しく、いくぶん嫌気がさしていたため、その巡り合いが遅れてしまった。

警視庁捜査一課の中でも地味な継続捜査班の田川警部補が語り部となって現代日本のガラパゴス化の悲惨を解いていく。
本作では、電子機器、家電業界の近年お凋落ぶりから、自動車業界のハイブリッド偏重が大テーマになっている。
そしてその生産現場における非正規労働者の過酷、悲惨が事件を哀しく織りなす。

日本産業界のガラパゴス化が指摘されてから久しい。
世界マーケットを視野に入れない唯我独尊の商品開発とマーケティングは一時相当な非難を浴びていたものだ。
今では、逆にガラパゴス化が日本の生き残りのように喧伝する開き直り指向もあるらしいが、
ビジネスのグローバル化、関税撤廃の潮流からかけ離れているのも歴然とした事実である。
一方、これだけ経済成長した日本にもうひと踏ん張りしろというのはおかしいと思う。
いわゆる成熟成長を目指す国家の生き方がそこに見えてくる。

しかし、本作にあるように現実にこの国はまっしぐらに日本人を貶めるかのような政策をとりつづけている。
非正規労働者が全体の4割・・・政府が説明する働き方を選ぶことができる人間的な傾向というわけではない。
その目的は企業のコスト削減であり、彼らは部品であり人件費ですらない。
彼らはどんなに働いても働いても貧乏から脱出できない。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」と首相は言う。
とりもなおさず、それは「世界で労働者がこき使われる国である」

身元不明の自殺者が他殺であることに気付いた警官が、日本の今起こっている不条理に挑戦する。
捜査を通じて日本の今起こっている不条理に挑戦する。
社会派警察小説として読みごたえあり、著者の「震える牛」も読んでみよう。
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