ジハード大陸 〈テロ最前線〉のアフリカを行く (2018/8/22)

文字数 750文字

2018年2月25日 発行
著者:服部正法
白水社



著者が毎日新聞アフリカ特派員として49か国を担当していた中で取材したイスラム過激派の現実を、本書は無知な僕に教えてくれる。
アフリカが日本からは地理的にも心情面でもずっと遠い大陸であることは残念ながら一つの事実だろう。
しかし、暗黒大陸アフリカといった差別的位置づけはもはやとっくに消え去り、近年の経済進展の勢いは目を見張る。
その主な要因は中国の経済援助、投資によるアフリカ全般の底上げであることくらいは僕の乏しい知識のなかにはあった。

その一方で、ジハーディストと称せられるイスラム過激集団、アルシャバブ、ボコ・ハラムなどによる悲惨なテロ事件のニュースに接する度に、いったいアフリカでは何が進行しているのか?という思いもあった。
ただし、それは遠いアフリカのことでしかなかったが、本書は今アフリカで起きているジハードを通じて、世界全般に及ぶ問題を提起している。

著者はジハーディストを取材するため各地に危険なインタビューウィ敢行する、
ケニヤ、ソマリア、マリ、ナイジェリア、チャド、そこでジハーディストが生まれた要因を求める。
イスラム教原理主義と過激派との明確な違いを理解していても、西洋思想的見地からの理解不足から、産み落とされるジハーディスト、アルカイダとISとの勢力争いに巻き込まれ精鋭化するジハーディスト、グローバル化された犯罪組織との提携で資金を得るジハーディスト。

問題の根本にあるのは汚職と富の独占に塗れた政府と圧倒的多数の貧困層との格差。
貧困ではなくその格差が若者をジーハーディストに追いやる。
アフリカの問題は世界の問題でもあった。

しかしアフリカには何世紀もかけて培った「不屈」の心があるという著者、
そこに希望を持っていいかどうか、僕にはわからない。
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