サウダージ (2017/6/21)

文字数 542文字

2004年9月25日 初版刷発行
著者:盛田隆二
角川文庫



1992年に発行されて25年になる小説だけど内容はいまの時代においても衝撃的で不可解でなんとなく切なくなってくる、けだし名作。
主人公は日本人の父とインド人の母親を持つ27歳の青年、母親はインドに戻りその後15年会っていない。
派遣会社で派遣社員管理をしてる・・・四半世紀前にすでに派遣労働者に付きまとう悲哀を抽出し将来の労働格差の傾向を示唆している。
主人公のまわりには東京で働く外国人が多く登場する、派遣登録しているパキスタン青年、父の愛人であるフィリピン美女、路上で知り合ったハワイの日系4世娘。
東京の猥雑な国際都市の一面を独自のディテイル描写が際立つ、盛田リアリズムの真骨頂だった。
中年派遣社員から、日系ハワイ娘から、14歳の中学生から、ついには義理の母からの誘いにどうしても応じきれない主人公。
物語は主人公のたった8日間の生活日記のように展開していく。
盛田さんの代表作「夜の果てまで」と異なって短い時間の中での一人の青年の生きることへの覚悟がそこ込められていた。

「サウダージ」とは、《 失われたものを懐かしむ、さみしい、やるせない想い》 
という意味合いなんだそうな。
僕が本作品で感じたサウダージは、若者特権の素直さ・・・かな。
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