警告 (2022/5/14)

文字数 1,378文字

2021年12月15日 第一刷発行
著者: マイクル・コナリー  訳:古沢嘉通
講談社文庫



「ザ・ポエット(1996)」、「スケアクロウ(2009)」に続く記者ジャック・マカヴォイ シリーズ三作目(2020)が本作「警告」だが、オリジナルタイトルは「FAIR WARNING」・・・今回主人公が所属するネットニュースサイトの名前になっている。
その名が示す通り、市民・消費者にとって悪意ある詐欺行為、欠陥商品などの情報を積極的に開示するデジタル化に対応した進化系ジャーナリズムである。
そんなサイトがあることなど不明の我が身をまず反省したのだが、著者後書によると、このサイトは実在しており小説内の編集長も実名、なおかつマイクル本人がこの組織の役員をしているとのことだ、もしかして本書は壮大な企業PRだったのか?
というのもこのサイトは情報を得る代わりの寄付及び個人・団体からの大口寄付で成り立っているとのことだから。
少なくともマイクル・コナリーが役員でいる大きな特典は世の中のダークサイドをいち早く詳細に知る立場であり、それは即小説の素材になるということでもある。
小説のもっとも重要なポイントである「テーマ」の深さは、よくできたフィクションであろうとも結局は事実に敵うことはない。
そんな最新の素材・テーマ(であろう)が本作で花開く。
そのためなのだろうか、僕もすっかり忘れ去っていた ジャック・マカヴォイが久々に登場する。58歳の年齢はベテラン記者としてまだまだ十分に活躍できるだろう、マイクル・コナリー代表作シリーズのハリー・ボッシュは70歳を超えてもまだ現役警官バリバリなのだから。

またまた前置きが長くなってしまった。
そこまでにくどい説明をした本作のテーマはというと、
「DNA」と「デジタル・ストーキング」、確かにこれは衝撃だった。
相変わらずのジェットコースターアクションサスペンスであるマイクル・コナリー作品を大筋であろうと事前にリークするのは本書・著者への冒涜に他ならないので詳細説明は省くが、事件とジャック・マカヴォイの関連を以下にブリーフィングしてみる:

マカヴォイは消費者擁護の記事を取材し、それなりに満足している、それは過去2作のベストセラー印税が残り少なくなっているから。
ロス市警から、ある日突然容疑者として尋問される、事故に見せかけた殺人の犯人として。
自らの無実を証明する以上に、この異常な殺人事件に興味を持つ。
同じ状況での事故・殺人容疑案件を複数見つける。
その被害者に共通するのは、DNA鑑定をした女性。
自分探しというロマンを求めてDNA鑑定ができるアメリカ、費用は23ドルと手ごろだ。
安価な料金には裏があった、DNA研究のためDNAは再販・再利用される。
DNAがダークサイトで取引され、女性蔑視、女性への暴力を推奨する「インセル(非自発的独身主義者)」の手に渡る。
そして、全米規模でのシリアルキラーが浮かび上がってくる。
犯人とマカヴォイとの戦いに、愛人だった元FBIプロファイラーが加わり、犯人との壮絶な死闘が繰り返される。

今の時代、宇宙規模の犯罪捜査がエンターテイメントの主流になりつつある中、
マイクル・コナリーは個人の知恵と勇気、地を這うような調査、そしてバイオレンスの世界に今回もまた僕をいざなってくれる、これがミステリーを手にする原点だ、。
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