一外交官が見た明治維新 (2018/1/23)

文字数 1,045文字

1960年10月5日 第1刷発行、2013年10月4日 第74刷発行
著者:アーネスト・サトウ ( Sir.Ernest Mason Satow)
岩波文庫



超ロングベストセラーの本書を手に取ったのは2018年が明治維新150周年ということだけれど、あまりにも長期間我が身の不明が恥ずかしい。。
本書は1921年(大正10年)にロンドンで出版されたもののその後25年間(1946年まで)日本では禁書とされていた。
著者サトウ(1843-1929)はイギリス人、SATOWという姓が佐藤に通じて近親感が増す、おそらく明治維新の時代でもそうであったに違いない。
彼が通訳として江戸勤務となった第一期6年半の日本滞在を記したのが本著である、のちの1870年に書記官、1895年に公使として再来日している。
1862年(文久2年)から1869年(明治2年)まで6年半は明治維新という革命の真っただ中、
イギリス公使の通訳として数々の激動の歴史的局面に立ち会っている。
内容は本人の日記に基づいて書かれており、天皇との謁見準備で忙殺された期間は日記がかかれず詳細がないという記述がある。
サトウは生麦事件(来朝した一週間後)、薩英戦争、四国連合艦隊と長州の下関戦争、天皇謁見行列へのテロ事件などなどの現場に参加遭遇し、その生々しくかつ英国側から判断した辛辣な感想は、教科書や大河ドラマでは学ぶことのできない歴史のひとこまを実感できる。
前述した、「禁書」となった理由もそこにあるようだし、特に天皇の姿・態度の描写は戦前の権力機構には許すことのできない不敬だったに違いない。
同様に、彼が出会って語り合った、いわゆる維新の志士たちのあけすけな描写も、戦前の日本観からは遠いものだったろう。
その彼が出会い、維新威信を語り合った人物たちは数多い:
五代友厚、伊藤博文、井上薫、高杉晋作、西郷隆盛、小松帯刀、徳川慶喜、後藤象二郎、桂小五郎、勝海舟、陸奥宗光、大久保利通、大隈重信、森有礼、そして明治天皇。
天皇からは第一回目の離任の際に蒔絵の用箪笥を送られている。
特に西郷隆盛と勝海舟から多彩な情報を収集しており、元祖MI6だったような気もする。
サトウは単に知日家というだけではなく、数多くの日本関連の書籍をしたためているが、
そのベースには日本各地を旅行し、日本食を試し、色町に遊ぶ好奇心があったこと、
特に語学の才能が突出していたことだろう。
本作は明治維新を身近に感じさせる、
そして それは明白な武力革命であったことを改めて確認する。
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